「信じる」とは? 角田光代の最新小説『神さまショッピング』発売
無宗教であっても、自分の努力の及ばない“メタ”な部分を「お願い」するのに手を合わせる人は多い。苦しい時の神頼み、イワシの頭も信心から。“聖地マニア”を自負する作家の角田光代さんの最新小説、『神さまショッピング』(新潮社、税込み1760円)が発売された。世界各国の聖地を訪れている角田さんが、「信じる」ということについて描いた作品だ。
誰にも内緒でひとりスリランカへ向かった美津紀が、善き願いも悪しき願いもかなえてくれる神さまに祈るのは、ぜったい誰にも言えないこと。あの人と縁が切れるのならば、何を失ってもかまわないと思う鶴子が向かったのは、おそろしいほど強力な効力を持つといわれる京都の神社。ここならば私は許してもらえる、解放してもらえる。思い詰めて各地の寺院仏閣を訪ね、パリの奇跡の教会へたどり着いた吉乃。神楽坂、ミャンマー、スリランカ、雑司ヶ谷、レパルスベイ、ガンジス川。誰もが何かにすがりたい今の時代に、私のための神さまを求める8人を描く短編集だ。
角田さんは、「私は聖地マニアで、各国の聖地をかなり訪れているのですが、どこも信者でごった返しています。神秘体験によってではなく、人々の俗な熱狂によって神さまはいるんだ、と何度も思わされました。日本人は特定の宗教を持たない、とよく言われますが、不特定の何かはかなり強く信じているのではないかと私は思います。その何かにあてはまるものをさがし歩く人たちの姿を、小説にしたいと思いました」と言葉を寄せている。