万博、夜は別の顔 光りきらめくパビリオン 世界の食とお酒でオトナ時間
開幕から約1カ月、連日多くの人で賑わう大阪・関西万博。日が沈み、夜のとばりが降りるころ、会場は別の顔を見せ始める。夜空に浮かぶように光る大屋根リングに水上ショー。光輝くパビリオンのあちこちで音楽が奏でられ、世界のお酒を楽しむ人も。「オトナ時間」を味わいに万博会場へ行ってみよう!
夕方から限定の夜間券の価格は大人1人で3700円と、1日券(平日:6000円、週末含む:7500円)より4~5割も安いのだ。修学旅行生などが会場を去った後、会場の混み具合が減った中でパビリオンを回れる「お得感」もある。5月7日からは、入場時間がこれまでの17時から16時に1時間早まる「トワイライトキャンペーン」もスタートした。

ミャクミャク像と大屋根リングを前に、万博ワールドへの没入感と仕事後の解放感に包まれる
まだ日が高いうちにゲートを抜け、パビリオンを眺めながら大屋根リングの中をずんずん横切っていく。「ちょっとのどが乾いたな」。赤い球体のシンガポールパビリオンに入り、切り絵のアートインスタレーションや来場者の夢を描く展示で心の洗濯をしたら、最上階でシンガポールを代表するカクテル「シンガポールスリング」を1杯。スッキリしたジンベースのカクテルの色は「夕焼け」をイメージするのだとも。

シンガポールを代表するカクテル「シンガポールスリング」(手前右)とホワイトラムにミントを合わせた「ボタニカルドリーム」(モヒート)(手前左)。次回は、現地で話題を呼ぶクラフトジン(奥に並ぶ3本のボトル)のカクテルも味わってみたい
さて、実際の夕暮れまではもう一刻。賑やかな音楽が聞こえてくるのは、オーストラリアパビリオンだ。ほぼ毎夕、オーストラリアで人気の歌手やバンドなどのステージがある。パビリオン横に立つカフェには珍しい食べ物が!ワニ肉を使った「クロコダイルフィレ・ロール」だ。「ワニは低脂肪でタンパク質が多く、オーストラリアでもブームを呼んだんだ」(カフェ責任者)。バンドの演奏を楽しみながらかぶりつくと、意外に癖がなく食べやすい。

マヨネーズ味のクロコダイルフィレ・ロール(右)のほか、スポンジケーキをチョコで包みココナツをまぶした伝統菓子ラミントン(左)も美味
日没が近づくと、空の色が変わり始める。急いでリングに上がると、大阪湾から瀬戸内に向かう海がオレンジ色に染まり、明石海峡大橋も遠くに。隣を見ると、「これだけでも価値あるよ」と、大盛り上がりのカップルがスマホで記念撮影している。リングに上る途中の階段の木組みの間からも、きらきら光る夕日が美しいので見逃さないで。

夕焼けでオレンジ色に染まった大屋根リングの上。たくさんの人たちが夕日を浴びながら記念撮影していた
夕焼けの感動さめやらぬうちにリングを下りると、各国のパビリオンに光がともっている。ウオータープラザの水辺は、まるで異国の街角のよう。ボヘミアングラスの壁から灯りがこぼれ美しいチェコパビリオンでは、本場のピルスナービールやマスコットの「レネ」カクテルが味わえる。

レストランの店内では、ビールを泡の量が違う3種の飲み方から選べる。ピルスナービールに誇りを持つチェコ人にとっては「泡もビールの大切な一部。チェコならではの飲み方を知って欲しい」(パビリオンPR担当者)

チェコパビリオン最上階からはウオータープラザが見渡せる。夜には、ここで3つ目のマスコット「レネ」をイメージしたカクテルをいただくのもオススメ
黄昏時の別世界に浸っていると、目の前の水面にいきなり噴水が!音楽と噴水にAR(拡張現実)技術を組み合わせた水上ショー「アオと夜の虹のパレード」が始まる時間だ。
事前に予約はしていなかったが、予約観覧エリアの外側のスペースに陣取り、しばし観賞。主人公の「アオ」が動き回り、光がオーロラのように揺らめく。燃えさかる火も、迫力満点だ。次はしっかり予約して、全編に没頭しようと決心!

大迫力の水上ショー「アオと夜の虹のパレード」。大屋根リングの上からもたくさんの人が観賞していた
漆黒の闇が舞い降りたら、再び大屋根リングに上がってパビリオンを見下ろす。赤・青・白のトリコロール照明が輝くフランス、光を絞って夜の砂漠の静けさを表すサウジアラビア、クラブのように目まぐるしく模様が変わるスクリーンの下で人気歌手のライブに人々が拳を振り上げるベルギー。たくさんの国々が競い合うように意匠を凝らす眼下の〝世界〟はまばゆいばかりで、うっとりしてしまう。

大屋根リングの上から見た、光輝くパビリオン。昼間とは全く別の世界が眼下に広がる
スペインパビリオンは「太陽の沈まぬ国」をその姿で表すかのよう。巨大な階段のてっぺんにある輝く「太陽」の入り口に吸い込まれるように入館し、スペインと日本の友情の歴史を表す海流「黒潮」の青、そして太陽の黄に彩られた目の覚めるような内部を巡る。

階段を上ったところにある「太陽」の中に、人々が次々入館していくスペインパビリオン
出たところのレストランで、サングリアとピンチョスをオーダー。「スペインのおいしさを知り、味わって欲しい」(店主)。国のイメージぴったりの明るくて居心地の良い店内では、日本では余り味わえない地方の料理も用意しているので、ぜひ立ち寄ってほしい。

ドンキホーテの故郷ラ・マンチャの塩ダラと野菜の煮込み、バスクのヒルダ(トウガラシの酢漬けとオリーブ)など5種のピンチョス(日によってピンチョスの種類は変更あり)とサングリア
21時ちょっと前にはじまるドローンショーにはまだ間があるので、近くのモナコ公国パビリオンへ。海中探検がテーマの展示を見た後、最上階にあるオテル・ド・パリ・モンテカルロのバーに向かう。まだ飲むの?と言われそうだが、リーズナブルなグラスワインを1杯オーダー。オテル・ド・パリ・モンテカルロの創業150年コニャック、超有名シャトーのワインなど、一生のうちに巡り会えるかどうかという高価なお酒もたくさんあるので記念日に利用するのもおすすめだ。

オテル・ド・パリ・モンテカルロが担うモナコ公国パビリオンのワインバー。ソムリエのサーブでいただく1杯は最高だ
ほろ酔い気分で、いよいよ、最大のクライマックスである「One World, One Planet.」。1000機のドローンが夜空に向かって弧を描き、色を変えながら次々と光のアートを浮かび上がらせる。言葉を発するのも忘れ、空を見上げる人々。光の樹が現れた瞬間、わけもなく涙が出そうになる。
想像を超える、もりだくさん。晴れ晴れとした気持ちで帰途に就く。さて、今度は何をみようかーーー。すでに、思いは次来る日に飛んでいるのだった。

1000機のドローンが描くアートが次々と夜空に浮かび上がる
今回は世界の味めぐりをしたが、パビリオンやフードコートで万博限定の日本食を堪能したり、フードトラックのファストフードを屋外ベンチで食べたりすることもできる。これから夏に向かい気温が上がる時期、夕涼みを兼ねて夜空の下で過ごすのもいいだろう。











