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~未来のスポーツ施設をささえる新技術~ 国産材活用の新技術で、人工芝グラウンドを11.1℃※1低く

環境省ETV事業で効果実証

2025年9月25日
日本体育施設株式会社

 

地球温暖化やマイクロプラスチックによる海洋汚染の進行、といった現代社会における課題は、スポーツ環境にも多大な影響を及ぼしています。これらの課題解決に向け、スポーツ業界は大きな変革が求められています。

 

スポーツ施設の建設を専門とする日本体育施設(にほんたいいくしせつ)株式会社(東京都中野区 代表取締役社長:越後 幸太郎)が開発した、人工芝※2用の国産ヒノキおが粉充填材が、2024年度環境省ETV(環境技術実証)事業の対象技術として実証試験を受けました。

 


環境省環境技術実証事業ロゴマーク

 

試験では、従来型人工芝※3と比較して、国産ヒノキおが粉を充填材として用いた人工芝の表面温度上昇抑制(冷却)が長く維持することが実証され、その結果が環境省のホームページにて2025年8月より公表されています。 

環境省ホームページ:https://www.env.go.jp/policy/etv/pdf/list/r06/140-2406a.pdf

 

※1:ヒノキおが粉を用いた人工芝と、ゴムチップの充填材を用いた人工芝(従来型人工芝)に同条件で各々散水を行い、従来型人工芝と比較してヒノキおが粉を用いた人工芝が、平均で11.1℃低温(表面温度)であることが確認された。

※2:投てき実施可能な人工芝「スポーツターフΛ(ラムダ)」 

※3:ゴムチップを充填した人工芝のこと。

                       

ETV事業とは

環境技術開発者でも利用者でもない信頼できる第三者機関(実証機関)が環境技術の環境保全効果等を実証し、その結果を環境省ウェブサイト等で公表することにより、環境技術の普及を支援する制度のこと。

 

 投てき実施可能な人工芝「スポーツターフΛ」とは

投てきとは、陸上競技の「砲丸投」「円盤投」「やり投」「ハンマー投」のことで、投てき実施可能な人工芝とは、これらの競技に対応した人工芝のことを指します。

スポーツターフΛ(ラムダ)

 

日本体育施設の投てき実施可能な人工芝『スポーツターフΛ(ラムダ)』は、独自の充填構造により、身体への負担を軽減するだけでなく、人工芝の耐久性を高めるなどの特長があります。

『スポーツターフΛ(ラムダ)』は、(公財)日本陸上競技連盟のすべての公認競技場で導入が可能です。

『スポーツターフΛ(ラムダ)』公式サイト:https://www.ntssports.co.jp/product/lambda/

 

環境技術実証について

領域分野

水・土壌環境保全技術領域と気候変動対策技術領域の2つの領域

実証対象技術

投てき実施可能な人工芝「スポーツターフΛ天然素材充填材ヒノキおが粉」

実証申請者

日本体育施設株式会社

実証番号

140-2406

実証機関

一般社団法人埼玉県環境検査研究協会

実証期間

令和6(2024)年8月~12月

実証技術の目的

人工芝の充填材に天然素材のヒノキおが粉を利用することで、夏季の人工芝表面温度を低下させ、暑熱環境の緩和に貢献するとともに、プラスチック(ゴムチップ)の流出を抑制すること。

以下、「実証報告書(概要版)  https://www.env.go.jp/policy/etv/pdf/list/r06/140-2406a.pdf 」より 

 

実証の目的

実証対象製品の表面温度上昇抑制効果等を明らかにすること。

 

実証方法

試験に用いた人工芝試験片の外観
下図のとおり、天然素材のヒノキおが粉を充填材として用いた人工芝(実証対象製品)とゴムチップを充填材として用いた従来型人工芝の試験片を2つずつ用いた(合計4つの試験片)。下図の通り、2種類の人工芝の片方の試験片に散水を行い、充填材の表面温度や含水率等の測定を行った。試験は夏季(2023年8月1~3日)に実施した。

実証結果

下図に接触型の温度計測ロガーで測定した充填材の温度推移を示す。日射強度、気温が高く、相対湿度が低い時間帯(正午~14 時頃)においては、乾燥した人工芝と比べ、散水した実証対象製品の場合は、散水日は28.0℃、散水翌日は16.3℃表面温度が低下した。一方、従来型人工芝の場合も散水による冷却効果が認められたが、散水日の正午以降に実証対象製品との差が生じ始め、冷却効果は徐々に減少した。散水翌日の正午~14 時頃においては、実証対象製品の方が従来型人工芝よりも充填材表面温度が11.1℃低くなり、実証する性能(10℃以上低減)を満たした。 

人工芝試験片の充填材表面温度の変化

 

実証対象製品の表面温度上昇抑制効果はサーモ画像でも確認することができた。 実証対象製品は、従来型人工芝に比べ、約1.8 倍も保水できることが明らかとなった。直射日光が当たる屋外においても、従来型人工芝に比べ高い保水維持性を有していることがわかった。また実証対象製品と従来型人工芝の日射反射率には明確な差は見られなかった。

散水翌日における人工芝試験片のサーモグラフィ画像(8/3 14時頃)

■所見

技術全体

実証対象製品は、従来型人工芝と比べ、散水による表面温度上昇抑制(冷却)効果が長く持続することが明らかとなった。表面温度上昇抑制効果の主な原理は、天然素材充填材の高い保水性による気化熱の長時間の発生維持であると考えられた。実証対象技術は、マイクロプラスチックの流出抑制とヒートアイランド対策の両方に貢献できる、環境保全・改善効果の高い技術であると考えられる。

その他  

実証対象製品の高い保水性に基づく表面温度上昇抑制効果は、人工的な散水のみでなく、自然の降雨によっても引き起こされると推測されることから、気象条件次第ではあるものの、散水設備を有する人工芝グラウンドのみでなく、散水設備を有しない通常のグラウンドにおいても、温度上昇抑制効果を発揮できると予想される。

 

技術開発の背景        

従来の充填材であるゴムチップと比べて天然素材であるヒノキおが粉は、保水性が高く、水分が蒸発する際に周囲の熱を吸収する現象(気化熱)が持続的に発生するため、夏季の人工芝の表面温度上昇を抑制し、暑熱環境の緩和に貢献できると考え、本技術の開発に至りました。

 

近年ではマイクロプラスチックによる海洋生態系への影響が懸念されていますが、従来のゴムチップに代わり天然素材充填材を使用することで、河川・海洋へのゴムチップの流出が無くなり、生態系への影響を軽減させることもできます。

木づかいサイクルマーク

 

日本体育施設の“国産木材を使用した製品づくり”が循環型社会実現への貢献と評価され、環境貢献の証である「木づかいマーク」(登録番号:A-240221)の使用が2024年に認められました。これからもスポーツ施設づくりを通じて、循環型社会の実現と環境保全に貢献してまいります。

 

 日本体育施設は「もう一歩先のフィールドへ 人と技術で未来を“”設する」

2030年に向けた中期ヴィジョンに掲げています。

既存の事業にとどまらず、その一歩先を拓き、持続可能な社会に貢献する姿勢を示しています。

 

国産材を活用した製品開発、グラウンドの暑熱環境対策、マイクロプラスチック流出対策等で、

SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、

そして目標14「海の豊かさを守ろう」の実現に貢献しています。

 


  • トップ画像
  • 試験に用いた人工芝試験片の外観
  • 人工芝試験片の充填材表面温度の変化
  • 散水翌日における人工芝試験片のサーモグラフィ画像(8/3 14時頃)
  • スポーツターフΛ(ラムダ)
  • 木づかいサイクルマーク
  • SDGsロゴ
  • 環境省環境技術実証事業ロゴマーク

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