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【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】掲載紙を買いに、みちのくへ

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】掲載紙を買いに、みちのくへ

2025年9月3日=2341
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


JR東北新幹線「一ノ関駅」で北に向かう「はやぶさ」

▽目指すは駅の売店

 東北地方を旅してきた。目指す場所はただひとつ。岩手県にあるJR一ノ関駅の「売店」だ。その訳はなんと、地方新聞を買うため。わが地元では手に入らぬレア物である。

 実はわたくし本年4月、岩手県一関市に拠点を構える某新聞社記者Kさんから取材を受けた。同県大槌町のとあるお寺でイベントが開かれKさんに出会い、別れ際こう言われた。
 「9月のがん征圧月間に合わせて記事を考えてます。よろしければ大橋さんあなたをインタビューさせていただきたいのですが」
 もちろん二つ返事で承諾だ。
 「心得ました、お電話お待ちしとります。身に余る光栄なお話、大感激です」
 素直にうれしかったぁ。がん治療を続ける中で発病前に比べれば何かと心身の弱りは避けられぬ。でもこんな身の上でも必要とされ、まだ出来ることがあるんや。生きる力を与えられる。

 その後メールや電話インタビューを通して8月下旬、校了した。掲載日は8月31日(日)と知らされ、後日その掲載紙を郵送するとも約束くださった。ありがたい。

▽ワクワク感を求めて

 ここで思い出す。自分に関する記事を掲載してもらう新聞を、当日最寄りのコンビニで、朝一番に買い求めたことを。あのワクワク感を。1部だけやない、親戚に配る分を含めて5部買っていた。
 「よ~し買いに行こう、みちのくへ」
 突然の決定だったが、専属秘書(※妻のあかねさん)も即同意してくれた。
 「一緒に行く」
 こうして掲載紙を買いに行くツアーが企画された。

 交通手段は電車だ。31日(日)は始発で三重を発つとして、せっかくなんで岩手に泊まろう、と急きょホテルを予約。それから月曜のパート欠勤を上司に願い出た。片道交通費だけでも渋〇〇一さん3人は必要な岩手と三重。それが二人分と、1部140円の新聞が一体どれだけになることか。親戚だけでは足りず、見知らぬ街行く大勢に配れるほどの数となろう。

▽車窓を楽しむ

 しかしこの旅、大満足やった。最寄り駅から名古屋駅まで地元私鉄で向かい、名古屋駅からはもちろん新幹線。東海道そして東北と乗り継ぎ、一気に一ノ関駅までも考えたが、仙台駅で新幹線を降りた。それから在来線。宮城から岩手までは、ゆっくりと車窓を楽しみたかった。
 途中で「小牛田」駅で乗り換える。この駅名、読めるかな。「こごた」が正解。真ん中の字は牛と午を勘違いしたんやないの。固有名詞の呼び名はホントに面白い。

宮城県遠田郡美里町にあるJR東日本鉄道駅、「こごた」なんて読めませぬ

宮城県遠田郡美里町にあるJR東日本鉄道駅、「こごた」なんて読めませぬ

▽売り切れやん

 午後2時ごろようやく一ノ関駅に到着。ここで問題が発生した。切望した新聞が売店に無い。別の地元新聞、さらに全国紙は置いてある。よ~く見るとその新聞名の名札はあることから、売り切れやん。もう一軒ある売店をのぞいたが結果は同じだった。う~ん、寄り道せんだらよかった…。

 後悔した。そして決心した。新聞社を直接訪ねよう。車で10分弱と調べはついている。駅前にタクシーが停まっていた。出費はやむを得ない。

 現場に到着して玄関をくぐり、守衛さんと話す。不審人物と思われただろうけれど、三重県から出てきたんや。手ぶらでは帰れない。あいにく担当記者Kさんは不在。日曜である。代わりの職員が応対してくださり、交渉により購買できることとなった。7部注文した。ありがたい。

 すぐさま新聞を広げた。ステキな仕上がりだった。恭悦至極に存じまする。Kさんホントに本当にありがとお~!!

 わがユーチューブらいぶ配信、こちらもしぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、気ぃ向かれましたならばお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。
 応援してもらえると生きる力になります。引き続きごひいきのほどなにとぞよろしくお願い申し上げまぁす。

(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

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