【Kカルチャーの視点】「ユミの細胞たち」の原作者、ウェブトゥーン作家イ・ドンゴン
▽ウェブトゥーンが担う“現代の小説”としての役割

トークショー来場者にサインをする「ユミの細胞たち」の原作者イ・ドンゴンさん
2000年代前半、漫画雑誌の相次ぐ廃刊とともに連載の場を失い、韓国の漫画産業は急速に衰退した。しかし、インターネットの普及が新たな道を開いた。アマチュア作家たちがオンライン上で作品を公開し始め、それが大手ポータルサイトで連載されるようになると、瞬く間に広がっていった。こうして誕生したのが、韓国発のインターネット漫画ウェブトゥーンだ。今やドラマや映画、ゲームなど、多様なコンテンツへと展開され、韓国文化の大きな柱の一つになっている。
–ウェブトゥーンと出版漫画の違いは?
ウェブトゥーンは、1回の分量が出版漫画の1章分よりも短く、トレンドを素早く反映する部分があるかなと。スマホでスクロールしながら読む形式のことだけじゃなくて、ウェブトゥーンの作者は“時代を映す”意識が強いんだと思います。出版漫画はそれとは逆ですよね。後半になればなるほど、どんどんその世界観にのめり込まされる。キャラクターも立体的に描かれているし。僕が好きな作品を比べた時にはそう感じます。
–Kコンテンツにおけるウェブトゥーンとは。
今この業界にいて感じているのは、ウェブトゥーンがかつての小説みたいな役割をしているということです。ドラマやゲーム、映画などを制作する時、以前なら本が原作になって、二次、三次と作品が発展しました。今は、NetflixでもDisney+でもウェブトゥーンが原作になることが非常に多くなっています。
–今後描いてみたいジャンルは?
これまではロマンスカテゴリーでしたが、もう描き切ったかなと思います。僕が年を取ったからかもしれません。今後は、恋愛ものとは離れたアクションなど、新しい挑戦をしてみたいですね。これまでが運が良すぎて、企画について悩んだことがなかったのですが、今回はじっくり悩んでみたいと思います。
–日本の読者にメッセージを。
頭の中にある悩みって簡単に口には出せないし、頭で思うことと口に出せることは違う。特に日韓は、文化的にそういう側面が強いのではないかと思っています。頭の中ではこんな欲望があったりするけれど、それを口に出したら失礼に当たったり社会的に問題になったりするので、隠したり言わなかったりする。そういうことを物語にしたんです。ユミがどこまで口に出し、どこまで表現するのか、そこに共感しながら見ていただくと楽しめるのではないかと思います。

作品中の「ユミの優先順位掲示板」に貼られた、「ユミの細胞たち」と書かれたイ・ドンゴンさんの付箋
プロフィール
81年生まれ。ウェブトゥーン作家。デザイン文具会社「甘い会社」の経営を経て、2011年「甘い人生」で漫画家デビュー。2015年「ユミの細胞たち」連載開始。NAVERウェブトゥーンを代表する名作恋愛漫画として人気を集め、2016年「今年の韓国漫画」選定、2018年大韓民国コンテンツ大賞漫画部門大統領賞受賞。「ユミの細胞たち」は2021年ドラマ化、2024年アニメ化。著作に漫画「ジョジョコミックス」、絵本「なっちゃん波の冒険」他。













