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JT・モルナー監督「この映画の実現は厳しいと言われた時に、『羅生門』を見れば分かると言いました」『ストレンジ・ダーリン』【インタビュー】

-最初に35ミリフィルムで撮ったというテロップが出ますが、画面の色遣いや音楽の使い方を見ていると、70年代のニューシネマのような雰囲気があると思いましたが、そういう狙いはあったのでしょうか。

 その通りです。ただ、それはアメリカ映画に限ったことではなくて、例えばケン・ラッセルの『肉体の悪魔』(71)、ジョセフ・ロージーの『召使』(63)、トニー・リチャードソンの『マドモアゼル』(66)などは、フレーミングやカメラのレンズの使い方、それから物語のつづり方を参考にしました。あとは黒澤明の『羅生門』(50)やデビッド・クローネンバーグの『戦慄の絆』(88)も意識しました。色遣いに関しては特に70年代のものに引かれます。当時は色遣いが割と明るくてはっきりしていて、ちょっとポップなことに加えて、フィルムならではのざらざらした感じがありました。その両方の組み合わせが、独特な雰囲気を生んでいたと思います。例えば『俺たちに明日はない』(67)『ファイブ・イージー・ピーセス』(70)『赤い影』(73)といった作品にもそれは共通してあった要素だと思います。

-最近の映画にしては珍しくたばこの火や煙、それから赤を基調とした色遣いが印象的でした。小道具としてのたばこの使い方も70年代っぽいなと思いました。

 もともと赤が大好きです。今はたばこを吸うシーンは物議を醸し出すので結構控えられています。けれども、たばこの火や煙は映画的には魅力があります。正しい理由でフィーチャーすることができれば、すごくすてきなものだと思うし、かつて見た映画の記憶やキャラクターのタイプに回帰させてくれる効果もあって、ワクワクする要素ではあります。僕が若い頃に夢中になって見ていた『ブラッド・シンプル』(84)『グッドフェローズ』(90)『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(94)といった映画の中では、皆が頻繁にたばこを吸っていました。そのイメージが今でも自分の中に残っていることもあるかもしれませんが、ただそれを見せたかったわけではなくて、今回のキャラクターにとても合っていたから使ったということです。

-これから映画を見る日本の観客や読者に向けてアピールも含めて一言お願いします。

 日本は、世界的にも大きな影響を与えた映画をたくさん生んだ国であり、アメリカでは必ずしも観客があまり見ないような作品も、日本の観客はたくさん見てくれています。だからこそ、僕にとって日本はとても大事な場所です。日本の皆さんがこの作品をどのように感じて、どうリアクションをするのかをとても楽しみにしています。「この映画の実現は厳しい」と言われた時に、「『羅生門』を見れば分かるよ」と言いました。悲劇的な事件を違った視点から描いていくという構造は、複雑ではあるけれども決して分からないことはないわけです。モラル的に何が正しいのかが、見る人によって違うこと自体がとても怖いことだと思います。だからこそ、そういうストーリーを描きたいという気持ちにさせてくれたのが『羅生門』でした。

(取材・文/田中雄二)

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