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毎熊克哉「桐島が最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました」『「桐島です」』【インタビュー】 

-実際に演じてみて感じたことや、演じる上で心掛けたことや気を付けたことはありましたか。

 自分が桐島を演じる上で一番重要だと思ったのは、(偽名の)「ウチダヒロシ」として、1人の部屋で朝を迎えて、窓を開けてコーヒーを飲んでというシーンでした。せりふがないので、演じる側としては、目覚めた時にこの日の彼はどういう心境なのかということを考えました。最初の方は「見つからないかな」という不安の朝、「大丈夫だ」という安心の朝もあれば、後半は「もうここらで終わせたいな」とか、いろんな感情があります。同じことの繰り返しの中でも変化があるようにしたいと思ったので、そこに一番気を使いました。

-桐島という人物についてどう感じましたか。共感はできましたか。

 僕は今38歳ですが、自分以外のことのために戦ったり、行動を起こしたことがあるかと言われるとそんなにないなって。そういう意味では共感はできていないかもしれません。ただ自分たちが年を取った時に、日本はどんな国になっているべきなんだろうと考えると、結局自分が持てる武器は作品だなと。彼は恐らくそのすべがなくて、爆弾だったのかもしれないと思いました。

-劇中で、桐島が彼女と一緒に映画『追憶』(74)を見るシーンがあり、河島英五さんの歌で有名な「時代おくれ」を歌いますね。どちらも桐島のロマンチストの一面がよく出ていたと思いますが。

 脚本には曲名は書いてありませんでした。どの曲を歌うのかはいろいろと吟味してあの曲になりました。実際に桐島が暮らしていた部屋にはギターがあったり、音楽が好きだったという事実はあるので、歌を歌うシーンは僕にとっては大きなヒントになりました。どちらかというと彼が好んで聴いていたといわれるものは僕も好きなので。映画もそうですけど、その人がどういうものを好きだったのかを知るのは大きいですし、歌や踊りはせりふ以上の何かを持っている気がします。人格や性格を表すときにそういうものがヒントになります。演じる自分にとってもそうですし、多分この映画を見る人にとってもヒントになるんじゃないかと思います。

-完成作を見た印象はいかがでしたか。

 『夜明けまでバス停で』(22)もそうでしたが、ドライに淡々と進んでいって、そのどこかにロマンが見え隠れするというのが、高橋監督の映画で僕がすごく好きなポイントで、この映画にも同じような感覚がありました。最後はちょっととがった終わり方だという気はしますけど。

-これから映画を見る方や読者に向けて一言お願いします。

 観客の層としては、恐らくこの時代を知ってる方が一番多いと思いますが、できるなら、桐島聡が2、30代だった頃と同じ年頃の今の若い人たちに想像をめぐらせながら見てほしいと思います。全く知らない時代の話だけど、この人は何に怒っているんだって想像することによって分かってくることがあったりもします。なるべく無知な状態で見てもらうのもいいんじゃないかなと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)北の丸プロダクション

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