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池田エライザ「不思議な夏の思い出として心にとめていただければと思います」『リライト』【インタビュー】

-この映画は『時をかける少女』など、大林宣彦監督作品の影響がとても感じられました。昔のものを見たりはしましたか。

 あまりにも有名なので、気付いたら何回も見ていたという感じです。でも、今回は気付かないようにしていました。美雪としてそこに気付くとおかしなことになるので。例えば、大林作品に出られた尾美(としのり)さんや石田ひかりさんが出ていますが、美雪としてはそのイメージは全くないので。それに『時をかける少女』がなくて尾美さんが先生をやっている世界線の話なので、私は意識しないようにしましたが、やっぱり監督たちは、尾道でロケをしたのももちろんですし、すごくリスペクトを持ってやっていらっしゃるというのは感じました。

-尾道でのロケはどんな感じでしたか。

 おととしの真夏に撮影したので、本当に暑かったんです。暑くないと出ない汗、暑さによって透けてくる血管、頬っぺたの外側まで赤くなったりとかは、霧吹きやチークでは決して表現できないものです。高校生の時はほとんどメークもしていなかったので、汗が透けて出てくるというのは、尾道の空気や湿度や温度を映像の中に閉じ込めてあげられたような気がして、よかったなと思いました。尾道は新旧が混じり合っている感じがするところがいいですね。それから、私が倒れるシーンの時にチームの皆さんが、アスファルトが熱くなってるからと毛布を敷いて熱を取ってくださったんです。そういう現場の愛情を感じると、この映画を絶対に成功させなければという責任感も生まれます。そんな現場の雰囲気の良さも映ったんじゃないかと思います。

-松居大悟監督の演出で印象に残ったことはありますか。

 特に細かい指導をされる方ではなくて気持ちの確認をする程度です。その時私がどういう気持ちでお芝居をしたかを説明して、監督がそれに納得すると、もうどこかほかの所へ行ってしまったりします。もちろん、こだわってらっしゃる部分はあって、例えば手や指の重なり方とか、手をつなぐ瞬間とかの指導には熱が入ります。やっぱり美しいシーンを撮る時の美的感覚は素晴らしいと思います。そういう時以外は基本的にニコニコしていらっしゃって、自由にやらせていただいたので、本当にお芝居がやりやすい環境でした。そういう感覚は、映画の中にも出ていると思います。学生たちの自由度を見たら分かると思いますが、皆怒られることを恐れていないし、やりたいようにやっていますから。

-完成作を見た感想を

 ネタバレを避けるのが難しいですけど…。私は美雪として見ましたし、自分が出ていないシーンを映像として目撃するのは初めてだったので美雪が知らなかった物語にショックを受けましたし、青春を奪われたような複雑な気持ちになりました。でも、映画を見た後の余韻が気持ちよかったです。主題歌を作ってくださったRin音さんの紡いだ歌詞が物語と重なって、エンドロールで初めて涙が出ました。最初に聞いた曲の印象と、映画を見た後で聞こえてくる曲の印象が全く違って、見た後の主題歌が心に染みて、すごくすてきな映画だと思いました。

-これから見る観客や読者に向けて、ネタバレになるので難しいですが、見どころも含めて一言お願いします。

 この映画は、夏に上映することを心から望んでいた映画です。夏を閉じ込めた映画を夏にお届けしたいと。自分たちが生きている現実世界から映画館に飛び込んで、この物語を見て、劇場を出て余韻に浸りながら、また熱い夏という現実に戻る。「あれは何だったんだろう」という不思議な夏の思い出として心にとめていただければと思います。ぜひ劇場で見ていただきたいです。何回も見るといろいろと分かることが違ってくるかもしれませんよ。

(取材・文・写真/田中雄二)

 

(C)2025「リライト」製作委員会

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