ヒト幹細胞コスメ徹底解説!期待できる効果と注意点
化粧品成分は新たな開発が行われるどんどん進化しています。その一つが数年前から注目されている「ヒト幹細胞培養液」。再生医療への期待でその名前がよく知られている「ヒト幹細胞」ですが、「ヒト幹細胞培養液」が何か、化粧品でどんな効果が期待できるのでしょうか?この記事では、ヒト幹細胞コスメとは何か、期待できる効果について解説します。
1.ヒト幹細胞コスメに「幹細胞」は入っていない!
「幹細胞コスメ」という言葉から、「幹細胞そのものを配合している化粧品」と勘違いしている人います。
しかし、化粧品に配合しているのは、「ヒト幹細胞を増殖させる培養液」であって、幹細胞そのものは使用していません。
これは、昆布とだしの関係でとらえると理解しやすいです。
鍋ものだしを取る際に使う「昆布」を「幹細胞」とすると、鍋のお湯に溶け込んだ「昆布のだし」が幹細胞培養液です。
化粧品に使われるのは、「ヒト幹細胞培養液」つまり、幹細胞が培養されて作り出す「成分」なのです。
2.「幹細胞」と「幹細胞培養液」の違い
1)幹細胞
幹細胞とは、自己複製能力と多様な細胞への分化能力を持っています。つまり、幹細胞は自身と同じ細胞を作り出すことができるだけでなく、必要に応じて肌細胞や神経細胞など、さまざまな種類の細胞に変わることができます。
このはたらきから、特に再生医療への応用が期待されています。
幹細胞はヒトだけではなく他の動物にもありますが、再生医療で注目が大きいのは、ヒト幹細胞です。
<参考記事>
幹細胞とは?種類と肌への美容医療と化粧品の効果を解説
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2)幹細胞培養液
幹細胞を培養する際に得られる液体のことです。この培養液には、幹細胞が分泌する成長因子やサイトカインなどの生理活性物質が豊富に含まれており、肌の再生や修復を促す効果が期待されています。
ヒトの幹細胞の培養液は「ヒト幹細胞培養液」と呼ばれます。
主に脂肪由来や臍帯(へその緒)血由来、骨髄由来の幹細胞培養液が化粧品で使われます。
3.幹細胞培養液の成分と効果
ヒト幹細胞培養上清液には、EGF(上皮成長因子)やFGF(線維芽細胞成長因子)などの500種類以上にもおよぶ生理活性物質(サイトカイン)や酵素、脂質、核酸、アミノ酸などが含まれています。
これらはヒトの肌を若く保つために必要不可欠な成分で、体内では複合的に働くことで、損傷した組織や細胞の機能回復などの重要な役割を果たしています。
例えば、次のようなサイトカインと働きがあります。
サイトカイン | 効果・はたらき |
---|---|
FGF(線維芽細胞増殖因子) | 血管新生、創傷治療 |
EGF(上皮細胞増殖因子) | シミ・くすみ改善、ターンオーバー促進 |
VEGF(血管内皮細胞増殖因子) | 血管新生、発毛、育毛 |
HGF(肝臓細胞増殖因子) | 組織再生・活性 |
KGF(ケラチノサイト増殖因子) | 発毛、育毛 |
PDGF(血小板由来成長因子) | 細胞分裂の促進 |
IGF-1(インシュリン様増殖因子) | 皮膚再生、ハリ・弾力アップ |
TGF-β(トランスフォーミング増殖因子) | 抗炎症、創傷治療 |
幹細胞培養液を配合した化粧品では、理論上これらの成分による効果が期待できます。
4.ヒト幹細胞培養液配合コスメの効果の実際
年齢を重ねると、肌の幹細胞の活動が低下し、肌の再生能力が衰えてきます。その結果、シワやたるみ、シミなどの肌老化が進行していきます。従来のコスメでは、できてしまったシワやシミに対してアプローチするものが多く、根本的な肌の再生力の向上には限界がありました。
しかし、ヒト幹細胞培養液配合のコスメは、肌細胞を活性化させるヒト幹細胞由来の成分を肌に与えることで、幹細胞の働きを助け、ターンオーバーのスピードを回復させることができることがわかってきました。
ヒト幹細胞培養液には、様々な種類のサイトカイン(細胞を活性化する物質)やグロースファクター(成長因子。細胞の増殖や分化を促進する物質)が溶け出し、豊富に含まれている点が他のコスメとの大きな違いです。これらがたっぷりと含まれた培養液を肌に塗ることで、皮膚組織の主要構成成分であるヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチンを作り出す線維芽細胞に働きかけ、皮膚の張りと弾力性を向上させる効果が期待できます。
また、角質細胞を活性化させ、肌のターンオーバーを促進し、肌の生まれ変わりを活性化させる可能性があります。さらに、ヒト幹細胞コスメには、発毛・増毛促進効果なども期待されています。
このように、ヒト幹細胞培養液配合コスメは、単に表面的な肌トラブルをケアするだけでなく、肌の根本的な再生力を高めることで、より本質的なエイジングケアを実現する可能性を秘めているのです。
しかし、ヒト幹細胞培養液は、医薬部外品としての有効成分として承認されたものありません。
その成分とメカニズムからエイジングケアへの期待は高いですが、あくまで化粧品であるため過度な期待はできません。
<参考記事>
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5.ヒト幹細胞培養液の安全性は?
ヒト幹細胞培養液は、一般的に安全性は高いとされています。
化粧品として使用される場合、各国の化粧品規制に準拠する必要があります。日本では薬機法の規制下にあり、安全性データの提出が求められます。
そのため、市場にある国産のヒト幹細胞培養液配合化粧品は基本的には安全です。
また、ヒト由来でありアレルギー反応のリスクも低いと考えられています。
しかし、その可能性が無いわけではありませんし、長期的な安全性データはまだ蓄積段階にあります。
今後、さらなる使用期間経過によってより精緻な安全性データが蓄積されることが期待されます。
6.まとめ
ヒト幹細胞コスメは、従来の化粧品とは異なるアプローチで肌の若々しさを保つ新しいタイプのスキンケア製品です。
重要なポイントをまとめると以下の通りです。
●ヒト幹細胞コスメの特徴
幹細胞そのものではなく、幹細胞培養液を配合している
500種類以上の生理活性物質が含まれている
肌の根本的な再生力を高める効果が期待できる
●期待できる効果
肌のターンオーバー促進
コラーゲン・エラスチンの産生促進
ハリ・弾力の向上
シミ・くすみの改善
発毛・育毛効果
●安全性について
一般的に安全性は高い
日本では薬機法により規制されている
アレルギーリスクは低いが、完全にゼロではない
ヒト幹細胞コスメは、エイジングケアに新たな可能性をもたらす注目の成分です。ただし、効果や安全性については個人差があるため気になる症状があれば使用を中止することが大切です。
今後の研究により、さらなる効果の解明と安全性の確立が期待されており、美容業界での発展が注目されています。
<筆者略歴>

富本 充昭:エイジングケアやスキンケアのアドバイザー 株式会社ディープインパクト代表取締役
京都大学農学部を卒業後、製薬企業に7年間勤務。
その後、医学出版社、医学系広告代理店勤務の後、現職に至る。
医薬品の開発支援業務、医学系学会の取材や記事執筆、医薬品マーケティング関連のセミナー講師などを行う。
ナールスブランドのエイジングケア化粧品の企画・開発・販売に従事。
ナールスエイジングケアアカデミーのコンテンツの企画・執筆・編集に従事。
Birth
1962年11月20日
Education
1981年 奈良県立畝傍高校卒業
1986年 京都大学農学部卒業
IMS システム80、100修了
その他 グロービスマネジメントスクールにて、経営戦略、マーケティング、消費財マーケティング、ファイナンス、アカウンティング、人的資源管理、オペレーションマネジメント、サービスマネジメント、ベンチャー戦略、ベンチャーマネジメント修了(Certificate of Business Administration)
富本 充昭:エイジングケアやスキンケアのアドバイザー
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