能登半島地震の復興を350㎞離れた場所から 作業員の安全を確保する大林組のテレワーク

人手不足対策などを目的に国が普及を目指すテレワーク。ICT(情報通信技術)を活用して働く時間・場所の選択肢を広げる、この働き方の先進事例を総務省が選んで表彰する「テレワークトップランナー2025 総務大臣賞」に、能登半島地震の災害復興を350km離れた千葉県君津市から遠隔操作で行っている、株式会社大林組 北陸支店 能登半島災害復旧工事事務所の取り組みが選ばれた。災害現場という過酷な状況下においても作業員の安全性の担保や生産性の向上に励んできた。その取り組みについて能登半島災害復旧工事事務所所長の西中淳一さんに話を聞いた。
▼汎用遠隔操縦装置「サロゲート®」を使ってテレワーク
――汎用遠隔操縦装置について教えてください。
正式名称は汎用遠隔操縦装置「サロゲート®」といい、さまざまな建設機械を遠隔操作できる装置のことです。実は「汎用」という言葉がキーワードです。建設機械は各建機メーカーそれぞれ独自の技術が加わったものなので、他社がそれを遠隔操縦しようとするとコックピットに大きなロボットのようなものを設置したり改造をしなくてはいけません。しかし、私たちが作っているのはコックピットのレバーに取り付ける装置だけです。各建機メーカー関係なく、どんな機械にでも取り付けて動かすことができます。
遠隔操縦を皆さんが使うパソコンに例えると、遠隔で動かす操作レバーがパソコンのキーボードやマウス、現場の様子がパソコンの画面だと考えてください。現場で動く機械はUSBのメモリスティックで、使いたい機械のメモリスティックを差すと簡単に遠隔で動かせるような仕組みです。
――「サロゲート®」はいつ発表したのでしょうか?
1991年に雲仙普賢岳で噴火がありましたよね。そこから建設業界での遠隔操縦の開発は進んだと聞いています。「サロゲート®」は2016年に発表しました。翌2017年、熊本地震で崩落した熊本城の石垣直下における復旧作業で、初めて使用されました。
――テレワークという言葉が流行するかなり前から導入されていたんですね。
テレワークトップランナー総務大臣賞の受賞が決まった時、私も含め周りは「え?建設現場がテレワーク?これがテレワーク??」という反応でした。テレワークといえば在宅勤務のイメージがありましたが、テレワークの「テレ」は離れるという意味なので、「サロゲート®」は完全にテレワークなのですよね(笑)
――「サロゲート®」はどのくらい離れた場所の操作ができるのでしょうか?
能登半島地震の復興については、協力会社が千葉県の君津市にあるので、その駐車場に作業スペースを作りました。能登までは直線で350kmですが、車や電車で行ったら650km離れた場所です。操作範囲は無制限のため、ロシア・ウクライナ戦争の戦場のがれき撤去での活用も検討されはじめています。

▼作業員の安全が第一
――現場で作業するよりも遠隔で作業する方が効率はいいのでしょうか?
1日の作業の時間を考えてみてください。遠隔だと通勤時間がないので効率は上がりますよね。また、例えば天候が悪い日。災害復興に行っている人たちはその近くに住んでいるので、能登に雪や雨が降って作業ができないときは急に仕事がなくなって休みになってしまいます。けれど、千葉で遠隔操作している場合は、能登に雨が降って仕事ができなくなってしまったときは、北海道の機械を遠隔で動かすことができます。メモリスティックを差し替えればすぐに現場は北海道です。丸1日働けますよね。そのため、全体的な効率で考えたら圧倒的に生産性は上がっていると思います。
また、今回のような災害の現場は危険な場所です。土砂や落石で崖になっているようなところの真下では遠隔で操作している機械が動いています。何よりも作業員の安全を守ることができる点で有効な働き方です。
――能登半島以外の場所でもテレワークはされていますか?
能登に限らず、人での作業がとても危険な箇所に加えて大きなダム建設の現場などでは導入は進んでいると聞いています。遠隔で東京から遠くのダム建設の作業ができたら安全を確保できますし、楽ですよね。
――万が一、遠隔で事故が起きてしまった場合はどうされていますか?
現場には必ず非常停止ボタンを持っている監視人がおり、予期せぬ機械の暴走が起こらないようにしています。機械は危ない場所を作業していますが、監視人はそこから離れた安全な場所にいますので、仮に土砂崩れが起きたとしても壊れるのは機械だけで、人の命は守ることができます。

▼建設業の3K(きつい・汚い・危険)をテレワークで変える
――機械の免許を持っている人であれば誰でも働くことができそうです。
建設業は昔からきつい・汚い・危険の3Kと言われていて、まだそのイメージが強いです。ただ、「サロゲート®」があれば、現場に行かずに家の中で、作業服も着ないでヘルメットも被らずに、起きてそのまま仕事ができます。しかも安全な作業ですのでもう3Kではありません。建設業のテレワークは魅力的だと思います。一人でも多くオペレーターになりたいという方が増えてくれたらいいなと思っています。
――オペレーターとしてチャレンジする人が増えそうですね
テレワークをすることで雇用の機会はとても増えると思います。オペレーターをしていたけれど、ライフステージの変化をきっかけに現場には行くことができないという理由で辞めてしまった方もいます。妊娠中や育児中の人、普段は車椅子に乗っている方や歩くのにも松葉杖がいるような人は、現場に行くことも機械に乗ることも大変です。
そのような方たちにも、家に遠隔操縦があれば楽に作業ができるので、雇用の機会が増えると思います。操縦室はゲーミングチェアとテーブルとパソコン画面があればできるので、そんなに広い場所は必要ではありません。オペレーターとして働いていた経験はその人にとって一生の強みになります。
――今後「サロゲート®」は欠かせませんね
日本だけに限らず様々な国で災害は発生しています。日本中、世界中に危険で人が近づけないところはたくさんあります。人の命を優先して復興をするためには、私たちの「サロゲート®」の技術が必要だと思っています。業界のため、日本、世界のためにも協力していきたいと思っています。
【プロフィール】
西中淳一(にしなかじゅんいち)/1995年から同業他社で官公庁や国土交通省の案件を担当し、2016年に株式会社大林組に入社。入社後は道路工事や河川工事に従事している。能登半島地震があった2024年1月から北陸支店に配属され、能登半島災害復旧工事事務所の所長として現在も能登半島の復興に携わっている。
他のテレワークトップランナー選定団体をご紹介します
アウンコンサルティング株式会社
【企業情報】
企業の海外展開をデジタルマーケティングで支援。多言語プロモーションを強みに、SEO、広告、AIO(AI最適化)の技術を活かし、国内外企業の課題解決と成長支援に取り組んでいる。所在地は東京、従業員数は29人。
【主な取組例】
全従業員が制約なく働ける環境を整えるため、原則完全テレワークを導入。DX投資やペーパーレス化に加え、業務の可視化・自動化を進め、社員同士の働く場所が離れていても安定した業務運営を可能にしている。また、居住地を問わない採用や非同期コミュニケーションを取り入れ、多様な人材が働きやすい制度を整備。働く場所や時間に制約のある人材にも活躍機会を広げ、労働力不足や地域格差の解消にもつながる取り組みを進めている。
株式会社エグゼクティブ
【企業情報】
営業アウトソーシング事業を展開。所在地は東京、従業員は34人。
【主な取組例】
「自由に働き、自由に生きる。」という企業理念のもと、採用から研修・実務までの全プロセスをオンラインで完結させ、週3でも正社員で完全テレワークを実施。全国から人材を採用できる仕組みを整備。テレワーク継続と経営安定化のため、研修・教育制度「MIRAI-GATE」、マネジメントシステム「DUAL」、チームワーク強化プロジェクト「SNAP」を導入し、コミュニケーションと育成体制を強化した。5年間の実践により、オフィス機能を再整理し、テレワークでもいかに「一体感」を再現するかを追求。結果として、生産性向上と利益率4.5%向上を実現した。
編集部からのお知らせ
新着情報
あわせて読みたい


自動車リサイクル促進センター



自動車リサイクル促進センター



自動車リサイクル促進センター





















