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ピンクのそうめん・コンピューター描いた小学生が大賞に、堂島こどもアワード「作品の物語」と「主客未分の心」

大阪市の堂島リバーフォーラムで11月9日、小学生絵画展の表彰式が行われた。審査員を務めたのは、奈良国立博物館の井上洋一館長と画家で日本藝術院会員の千住博氏。毎年絵画展を見守ってきた二人の巨匠が、子どもたちの絵に込められた物語やリアリティーを丁寧に講評した。

▼【高学年の部】大賞「特別だったピンク」

高学年の部で大賞に輝いたのは、そうめんの中に一本だけ混じるピンクの麺を描いた岩松珠佳さん(4年生)。井上氏は「この構図は本当に素晴らしい。皆さんも経験があるでしょう。そうめんの中に一本だけあるピンク。あれが入っていると、ラッキーってなる。作者は、友人たちが自分のために仕組んでくれたと後で知る。その思いを込めて、友人たちを個性豊かに描き、自分は一番下に控えめに配置している。友達を思う気持ちが絵の中に表れていて、最後のコメント“優しさも流れていた”という言葉がとても印象的だった」と話した。

同部の優秀賞には、地球温暖化をテーマにした井上優登さん(5年生)の作品が選ばれた。千住氏は「地球が砂漠化していく様子を描きながら、ひび割れを糸で補修しているような表情もあり、滑り台で目玉焼きを焼くようなユーモラスさもある。現代アート的な感覚を持つ、恐るべき小学生です」とその表現力を称えた。

また、審査員特別賞(井上洋一選)には、ふるさとの滝を描いた村田理紘さん(6年生)が選ばれた。井上氏は「圧倒的な迫力。豪快な滝の勢いの中に、さまざまな色を発見している。作者がコメントに『僕の父の生まれた町にある不動滝。子どものころ夏休みにはサンショウウオを探しに通った。災害で行けない年もあったけれど、きれいなお滝さんがいつまでもふるさとにあってほしい』と書いていて、滝の勢いが被災者を励ましていると感じた」と述べた。

さらに、審査員特別賞(千住博選)には、修学旅行先の淡路島で見たうずしおを描いた梅垣友里さん(6年生)の作品が選出された。「画面の上半分(橋)は人工的で力強い現代科学、下半分(海)は人間の力が及ばない自然の脅威。それらが一枚の中で調和している。構図も色感も抜群で、捉え方の大胆さが素晴らしい」と千住氏は評した。

▼【低学年の部】大賞「コンピューターに感謝」

一方、低学年の部では、堀田回さん(3年生)が大賞を受賞した。コンピューターを使って古生物を調べる様子を描いた作品で、千住氏は「DNA配列などを描いていて、低学年の子どもがここまで描くのかと敬服した。この豊かな才能と知性、私は強く尊敬した。子どもとか大人ではない。絵を描く一人の人間として見事なものだと思う」と評価した。

優秀賞には、自然の中で愛犬たちを描いた千倉蒼大さん(3年生)が選ばれた。「山や滝のある自然の風景の中で、愛犬をクローズアップさせる構図がとても良い。『僕だけに秘密の場所を教えてくれた』というコメントには、犬たちが自分をこの場所に導いてくれたような物語性が感じられる」と井上氏は述べた。

さらに、審査員特別賞(井上洋一選)には、トリケラトプスをモチーフにした國吉冬馬さん(2年生)の作品が選ばれた。井上氏は「太古の恐竜を現代に蘇らせたいという作者の温かい気持ちが、この色使いに出ている。タイトルが『未来の地球におねがい!!!』。自分の気持ちを明るい雰囲気で全体に表現し、恐竜に対する熱い思いが伝わる作品」と語った。

もう一つの審査員特別賞(千住博選)は、春の桜と小川を描いた坂夢乃さん(2年生)。「この絵を見て、在原業平の歌を思い出した。“世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし”――桜がなければ春は退屈だ、という意味。まさに在原業平の心と同一のものをここに見て驚嘆した」と千住氏は感銘を語った。

最後に、二人の審査員が全体講評を述べた。井上氏は「今回は単に“作品を見る”というより、“作品に耳を傾けたい”と思う作品が多くあった。どの絵にも物語があり、その物語が子どもたちに作品を生み出させている。そこに絵画の可能性が潜んでいると特に感じた」と振り返った。千住氏は「子どもたちの作品は、主体と客体が一致している。これは哲学者・鈴木大拙の『主客未分』にも通じるもので、描かれている世界がそのまま自分の体験なので、そのことが子どもたちの作品の圧倒感を生み出している。子どもは大人が見過ごすようなことにも敏感に感動している。その無垢な柔らかい心を守り、応援していきたいと改めて思った」と締めくくった。

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