林裕太「北村匠海さんや綾野剛さんとのつながりを感じました」期待の若手俳優が先輩2人と作り上げた迫真のサスペンス『愚か者の身分』【インタビュー】

林裕太(ヘアメイク:佐々木麻里子、スタイリスト:ホカリキュウ)(C)エンタメOVO
-その場でとっさに反応したように見える迫真のお芝居でした。では、マモルにとってもう一つ大事な要素である北村さん演じるタクヤとのバディ感は、どのように作っていったのでしょうか。
北村さんと一緒に現場で作っていった感じです。僕が最初、緊張していたら、北村さんが僕を受け入れる姿勢でいてくれたので、僕も積極的に距離を縮めようと、休憩時間に一緒に食事をしたり、「食事に行きませんか」とお願いしたりしました。それを快く受け入れてくださった北村さんは、2人の時間を大切にして、たわいのない雑談にも付き合ってくれて。そこから僕たち2人のいい空気感が生まれ、それがマモルとタクヤの関係ともリンクし、さらにそれが再び僕らの関係にいい影響を及ぼす形で循環していった印象です。
-北村さんは本作について「綾野剛さん〈梶⾕〉から僕〈タクヤ〉へ、そして僕から林裕太くん〈マモル〉へと、役者〈役〉が『次の世代へ“⽣きる”を授ける』構造になっている」と語っていますが、そういう北村さんの思いを感じたことはありますか。
役者としての僕の悩みを聞き、お芝居で引っ張ってくださる北村さんの奥に、綾野さんの存在をずっと感じていました。北村さんが「以前、綾野さんと共演したとき、自分がこういうことをしてもらったから、今回は僕が裕太くんにした」と話してくれたこともあります。

(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会
-そうでしたか。
さらに北村さんが話してくれたのは、今回のお芝居で北村さんが綾野さんに頼らざるを得ない部分を、綾野さんが信頼して引き受けてくれた。だからその分、北村さんも僕のお芝居を受け止めるつもりでいてくれるんだと。北村さんの「裕太くんは何をしてもいい。自分が全力で受け止めるから」という言葉も、僕を安心させてくれました。そこに、僕たち3人のつながりを感じました。
-劇中、林さんは北村さんとご一緒するシーンが中心になりますが、綾野さんから受け取ったものもあるのでしょうか。
綾野さんは会うたびに握手して僕の肩をたたき、「林くんは大丈夫。一緒に頑張ろう」と声を掛けてくださり、それが大きな励みになりました。当初、僕は「お2人と同じ土俵に立つために頑張らなければ」という意識が強かったんです。でも、綾野さんのおかげで、「一人で頑張る必要はないんだ」と気付くことができ、安心すると同時に心強い気持ちになりました。
-そういう3人の絆が、この作品に生きているわけですね。それでは、この作品を通じて林さんの収穫になったことを教えてください。
一緒にお芝居する相手を思いやることの大切さを知りました。今まで僕は、自分の役にばかり意識が向いていましたが、役の関係を踏まえ、役者同士の関係を大切にすることが、役に深みを持たせ、作品をよりよくすることにつながるんだなと。そういう思いやりを持てる役者にならなければと思っています。
-完成した映画をご覧になった感想はいかがでしたか。
出演できてよかったと、心から思いました。普段は自分の出演作を見るとき、なかなか客観視できず、自分の欠点にばかり目がいきがちです。でも今回は、素直に作品を楽しむことができた上、想像以上の充実感がありました。撮影中はマモルとタクヤの関係に注力していた分、闇ビジネスに巻き込まれていく若者の貧困を扱った作品の意義深さも、そのとき初めて実感できましたし。こんな素晴らしい作品に仕上げていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。

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(取材・文・写真/井上健一)