KK KYODO NEWS SITE

ニュースサイト
コーポレートサイト
search icon
search icon

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(11)道明寺天満宮と歴史の英雄たち~正成、幸村、そして道真〜

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。

 神道講釈師は、人々が日々の生活で忘れかけている土地の物語を語ることで、そこで生きる意味や誇りを思い出させる存在。今回は、学問の神様として知られる菅原道真公(天神様)を主祭神として祀る、大阪府藤井寺市の道明寺天満宮についてのお話です。

▼図書室で出会った英雄たち

 実は、道明寺天満宮との心の距離は近いものでした。

 小学校4年生から中学校1年生まで住んでいたのが藤井寺市の惣社(そうしゃ)と呼ばれる地域でした。通った小学校が道明寺東小学校。そして、通った中学校が道明寺中学校。その時期の私の人生は「道明寺」であふれておりました。

 藤井寺に来る前は大阪市平野区に住んでいました。道明寺東小学校に転校してきて初めての朝礼で、校長先生が楠木正成(くすのき・まさしげ)の話をしていました。平野区では聞いたことがなかったその名に、楠木正成を初めて意識した瞬間でした。

 気になった私は図書室に行きました。ハードカバーの歴史漫画シリーズがずらっと並んでおり、そこにあった楠木正成の一冊を手に取りました。

 楠木正成は、鎌倉幕府を倒そうとした後醍醐天皇に味方して戦った南河内の武将です。藤井寺のすぐ南、富田林のさらに奥に広がる金剛山地で、幕府の大軍を相手に奮戦する楠木正成の姿に、ワクワクドキドキしました。

 続けて読んだのが、真田幸村(さなだ・ゆきむら)です。大坂の陣の際、幸村は豊臣方のもう一人のエースである後藤又兵衛(ごとう・またべえ)を救援すべく道明寺へと急ぎましたが、深い霧に阻まれます。道明寺口の戦いで、又兵衛が「幸村殿はまだか」と言い残して討ち死にする姿が描かれていました。

 それから歴史漫画の虜になりました。全シリーズを読んだと思います。この時の読書経験が、今の講談師としての私の血肉になっているのでしょう。

▼白球を追った、かつての戦場

 しかし、小学生の私にとって道明寺は、まだ「物語の舞台」というよりは、新しい生活が始まったばかりの「現実の遊び場」でした。

 新しい学校で友達ができ、その友達に3年生までソフトボールをやっていたことを伝えると、「少年野球に入れよ。一緒にやろう」と言われ、そこから野球少年になりました。

 当時の藤井寺には、近鉄バファローズの本拠地である藤井寺球場がありました。市報についてくる、たしか500円の野球観戦割引券をハサミで切り取っては、自転車で通ったものです。

 当時の球場はのんびりしたもので、満席には程遠く、全てが適当な感じで、野球選手に今ほどのアスリート感はなかったように思います。

 打つのが下手だった私は、選手のマネをして、お尻を振ったり、お尻を突き出したり、お尻を落としたりして打席に立ちましたが、私の打率は一向に上がりませんでした。

 年に一度、その藤井寺球場で少年野球大会が開かれるのが特典でした。球場での試合ではプロの偉大さを知りました。プロの内野の広さは、少年野球の外野ほどありました。

 「プロはすごい、すごすぎる!」

 こうして、かつての戦国武将たちが命を懸けて駆け抜けた土の上で、その歴史も知らずに、私はただ白球を追いかけていたのです。

▼「土師ノ里」に眠る学問の神様のルーツ

 当時の最寄り駅は「土師ノ里」でした。最初は、この駅名が読めませんでした。「はじのさと」の読みを知り、「恥の里」の漢字を思い浮かべていました。

 大人になってから、「土師(はじ)」と菅原道真公のつながりを知り、驚愕しました。

 菅原道真は、わが玉田家が『菅原天神記』として語り継いできた人物です。右大臣にまで上り詰め、後に「学問の神様」と仰がれることになる当代随一の文人ですが、そのルーツは、陵墓管理や土器・埴輪(はにわ)の製作などを担ってきた「土師氏」にあったのです。

 この家系がなぜ土師となったのか。そして、道明寺天満宮に残る道真公の宝物にまつわる事実と伝承のズレとは何なのか。道明寺天満宮での神道講釈は、また次回のお楽しみ。


四代目・玉田玉秀斎

玉田家は幕末、京都を拠点に全国で活躍した神道講釈師・玉田永教の流れをくみ、三代目玉秀斎は『猿飛佐助』『真田十勇士』『菅原天神記』『安倍晴明伝』などを世に広め、明治大正期の若者に大きな影響を与えた。四代目玉秀斎はロータリー交換留学生としてスウェーデンに留学中、逆に日本に興味を持ち講談師に。英語講談や音楽コラボ講談、観光講談、ビッグイシュー講談など新作講談を多数公演。さらに文楽や吉本新喜劇、地域の伝統芸能とのコラボ公演も多い。京都講談復興のため、京都劇場で定期公演中。2024年3月三重大学大学院修士課程「忍者・忍術学コース」修了。2024年4月より和歌山大学大学院・観光学研究科後期博士課程にて研究中。NHK朝ドラ『ばけばけ』怪談ばなし指導(2025年秋~放送中)。FM大阪『天才的なバカになれ!』毎週日曜放送中。海外渡航歴は25カ国以上。京都検定2級。

編集部からのお知らせ

新着情報

あわせて読みたい