「風のたより~地域経済」人口増への仕掛けづくり

図書館リニューアル前(写真上)と後(新城市役所提供)

 新型コロナをきっかけに、東京一極集中が是正されるという期待感が出ている。「3密の極み」東京から、人口の少ない地方へ人が流れるというのだ。

 しかし、私はそんな単純なストーリーにはくみしない。どこの地方もそんな恩恵にあずかれるわけではない。口を開けていれば、人口が増えるわけではない。大事なのは、それぞれの地方が危機感を持って仕掛けをつくることだ。

 そうした意味で、今回ご紹介したいのは、愛知県新城(しんしろ)市の「若者議会」だ。

 この若者議会は、よくある模擬議会とは、一線を画す。実際に予算を確保し、その使い道を決めている。つまり、若者の意見が目に見える形で実現する。それでは、若者議会とは具体的にどんなものなのか。

 若者委員は公募で選ばれる。おおむね16歳から29歳で、市内在住、通勤、通学の20人。高校生、大学生、若い社会人がメンバーだ。任期は1年で、年に20回程度の会議を開く。非常勤特別職の公務員という立場で、1日当たり、3000円の報酬がある。

 これまで、若者議会が市長に提案し、実現した政策は数多い。例えば市内の図書館の改修だ。利用者が少なかった2階の展示場所を学生が勉強できるような多目的スペースに改修した。その結果、利用者が急増した。

 また、バスの利用者を増やして活性化につなげようと「バス攻略アドベンチャー」なるイベントを企画した。実際に運転席に座ることができたり、バスと綱引きしたりなど、バスを身近に感じさせ利用率の向上に取り組んだ。

 若者議会は、条例に基づき設置され、若者たちが予算の使い道を自ら考える。予算は、毎年1000万円ほど。あえて条例化したのは、市長が代わっても、継続するためだ。新城市では、若者議会が始まってから、高校生が市役所に立ち寄ることが増えたという。

 全国でも珍しいこの取り組みが始まったのは、2015年だ。きっかけは、元岩手県知事の増田寛也氏の、いわゆる増田リポートだった。新城市はこのリポートで、県内の市で唯一、消滅可能性都市に名前が挙がった。

 新城市はこのリポートを受けて、危機感を抱く。消滅させないためには、どうすべきか。真剣に考えた。若者に住んでもらうのが大事なポイントだとし、若者議会の設置となった。

 この「危機感」こそが、地方衰退に歯止めをかける原動力になる。従来型の公共事業や工場誘致とは違った形で、どんな仕掛けを打ち出すか。限られた予算の中での実行力が、首長に問われている。

(ジャーナリスト 出町 譲)

 

(KyodoWeekly9月7日号から転載)

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