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中国の「ばらまき」外交の行方 「一帯一路」政策の裏にあるもの

 中国の習近平国家主席が主導する、巨大経済圏構想の「一帯一路」政策。国際社会では、中国によるインフラ整備支援が、アフリカなど発展途上国を「借金漬けにしているのでは」との批判も強い。中国では、国内の貧困問題解決よりも、途上国にお金をばらまく「撒幣(サーピー)」外交への反発も出ている。中国情勢に詳しい龍氏に、一帯一路政策の裏にあるものを解説してもらった。(編集部)

 

 数年前、筆者の知人から次のような話を聞いた。中国の大きな銀行のトップを務めた「紅二代」(こうにだい)がいた。紅二代とは、中国建国に参加した中国共産党や軍幹部を親らに持つ子弟のことだ。

 超エリート層の彼が現役時代に北朝鮮に出張したとき、北朝鮮の重要人物たちと宴席をもった。彼は北朝鮮が中国のように改革すべきだ、と提案。三つの段階を踏まえ、改革が進めば資金面での支援ができると主張した。彼の権限で、8千万元(約12億円)ぐらいは、用意ができると胸を張った。

 しかし、北朝鮮側の要人らは、「その三つのステップは要らないから、まずお金をください」と応えた。この話題は、中国と北朝鮮における金銭外交の実情を物語るエピソードだろう。

 事実、中国が北朝鮮に莫大(ばくだい)な資金や物資を援助したことは公の秘密だ。6月下旬の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の前に、習氏が突然、北朝鮮を訪問したときのできごとを見ればよくわかる。

 新華社をはじめ、中国政府系のマスコミは習氏の北朝鮮訪問を大々的に報道したが、肝心な北朝鮮への援助額は見当たらない。中国のスポークスマンはただ「経済建設発展領域の交流を強める」と一点張りだった。

 しかし、国際問題専門家から一般の中国人まで誰もが次のように思うであろう。「北朝鮮は盛大な歓迎パレードで習氏を歓迎したが、それは中国のお金だ」と。中国は、北朝鮮にかなりの物資援助や資金支援をしないと、北朝鮮も話をきいてくれないはずだからだ。

 中国は自国の力を誇示するため、北朝鮮をはじめ発展途上国への援助額を公開報道していたが、最近は公開しなくなった。それは習氏が進めていた「撒幣(お金をまき散らす)」外交を批判されたことに関係している。

 一帯一路は習政権による外交政策の要である。それを推し進めるためには中国が巨額な資金をアフリカなどの国に投入しなければならない。その上、米国など西側先進国に対抗するために、または中国の主張に同調させるためにも、たびたびアフリカなど途上国の債務を免除し続けた。

 これらの報道が多くなるにつれ、習氏の外交政策は「撒幣」外交と名づけられ、風刺する対象になった。「中国の教育や医療など福祉はまだ十分ではないのに、なぜ貧しい国ばかりにお金を援助する」と民衆の不満は大きかった。

 中国の対外援助額も徐々に報道から消えていった。2018年9月、習氏が中国アフリカフォーラムで無償援助や基金などを含め、総額600億ドルの資金を提供すると公表した。同時にアフリカ各国の債務も免除するとの報道が流れた。それに対し批判や反対のコメントがあまりに多く寄せられたので、中国ポータルサイト「新浪網」が関係報道の書き込みを禁止した。

 人民日報系の「環球時報」はわざわざ社説を掲載し、「中国のアフリカ援助に対して、大国の心持ちをすべきだ」と力説、政府のために弁護する論陣を張った。以来、中国政府は対外援助の報道は一層慎重になった。 しかし一帯一路を推し進めるために、援助のテンポを緩めることができなかった。

 習氏がトップに就任以来、外遊した国にお金をまき散らし、中国の強国ぶりを演出していった。

 先進国を訪問すると、ビジネスパーソンを数多く連れて行って爆買いをする。途上国に行くと、巨額な援助を提供する。なぜだろう?

 まず中国は強国になったとアピールし、世界のリーダーになるために仲間を増やそうとするためだ。もう一つは中国国営企業を存続させるためである。

 これまで中国の経済は、不動産やインフラ投資などを頼りに、著しく発展してきたが、もう限界に達していることが背景にある。特に国営企業は供給過剰に悩まされ、海外市場に行き先を求めるしかない。多くの中国企業は世界市場を視野にいれて生きる道を求めている。

 だから中国政府は一帯一路を旗印に、途上国に資金援助をし、建設などのプロジェクトをつくりだして、中国企業に受注をさせているのだ。

 今年6月末に、中国政府が21億元(約318億円)を超えるローンをフィリピンに提供し、中国電信がフィリピンの高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムを建設させる、と米経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」が報じた。

 ネット構築に使われる監視システムは、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)製を使うと決めていた。こうすることで、中国の国有企業は生き残れるだけではなく、それら国有企業トップである、紅二代たちの財布も潤う。その結果、習氏の権力も安泰なのであろう。

 最近の中国外交は一帯一路政策に反して、横柄な印象を受ける。王毅外相をはじめ、駐外大使やスポークスマンまで、外国の記者らに無礼な言葉や振る舞いをし、国際社会で異様な雰囲気を醸成している。海外在住の中国人に揶揄(やゆ)されたように、今の中国外務省は「中国外交破壊省」となったのではないか。指導者たちは、国際的に通用する基本的な理念に、あまりに無知であることを物語っているであろう。

(中国ウオッチャー 龍 評)

 

(KyodoWeekly9月23日号から転載)

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