「笑点の歌丸ではなく」

 

 50年以上も前、地方の小学生が父親に連れられ寄席に入ると「崎山(さきやま)さ~ん」と若手噺家さんの大きな声が高座から聞こえた。子どもにも分かりやすい口調で熱演していたその人が桂歌丸師匠だった。繰り返される「崎山さ~ん」に場内は沸きに沸いていた。中学に進んで落語を聴き込んでいき、その「崎山さ~ん」は、あの昭和の爆笑王・柳家金語楼先生作で古典の「たらちね」を下敷きにした「嫁取り」という題の噺(はなし)だと知る。

 高校生になると立川談志師を崇拝し、いっぱしの落語通よろしく「落語は古典に限りやす」などとほざいていた。当時の「芸術協会の新作」を毛嫌いし、親が新作落語を見ていると「テレビのチャンネル変えて」と頼んだりした。古典派の桂文楽、三遊亭圓生、古今亭志ん生各師らを必死に追いかけた。全く新作落語を寄せ付けなかった、困ったもんです。

 歌丸師の十八番(おはこ)の余技に「化粧術」がある。鏡をのぞき込んで一心不乱に化粧する女性をパントマイムで見せるもので、これは見事だった。新作落語を嫌いな人間でも見るたびに笑え、楽しませてもらった。横浜の実家が「お女郎屋さん」だったと聞き、毎日目の当たりにしてたんで、うまくなったんだと妙に感心したのを覚えている。談志師の推薦でテレビ番組「笑点」のメンバーに抜てきされ、その明快な口跡は大喜利にピッタリはまり、人気者になった。

 談志師という人の慧眼(けいがん)には、この例でも驚かされる。早くから歌丸師のセンスを見抜いていたわけだから。番組の演出で三遊亭金遊師(後の小円遊師)とお約束でののしり合いを繰り返した。「あれが楽しみ」というファンも確かにいたが、筆者はイヤだった、言葉が汚な過ぎた、見るに堪えなかった。 歌丸師ならもっと違う処理の仕方があるだろうにと。司会者になってからの三遊亭楽太郎師(現円楽師)とのバトルは、噺家さんらしいウイットがあって笑えた。

 「笑点の歌丸ではなく、落語の歌丸で終えたい」と病身をおして古典に意欲的に取り組み、埋もれていた「いが栗」「おすわどん」などを掘り起こして演じた。その意欲は衰えることを知らず、「趣味は入院、特技は退院」と言われながら、晩年まで落語中興の祖・三遊亭圓朝師の「真景累が淵(しんけいかさねがふち)」「牡丹(ぼたん)燈籠」などの難物に挑んだ。歩けないので座布団にすわったままで幕を開けさせ、酸素吸入器をつけたままの高座に首をかしげる人もいたと聞くが真面目さ、熱心さ、その執念には頭が下がる。

 「圓朝ものの歌丸」が定着しつつあったが、筆者にはいつまでも「崎山さ~ん」の歌丸さんだ。師匠のおかげでいい後輩がいっぱい育ってますよ! 歌丸師匠、お疲れさまでした。7月2日死去。

落語家

桂 歌丸さん 享年81

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly7月16日号から転載)


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