「本の森」定年バカ

勢古 浩爾著

●215ページ

●SBクリエイティブ(税別800円)

 

定年控えた人の必読書

 

 定年になった人やその予備軍を当て込んだ、いや、食い物にする「定年本」が書店に並んでいる。定年を意識すると不安に駆られる人たちが多いのだろう。

 他人の不安に付け込んだ本とも言えなくはないが、本書はそのような定年本を粉砕する内容の本である。いわば「反定年本」だ。

 定年を控えた人の必読本と言っていい。だいぶ前になるが前の新聞広告には「大反響!5万部突破」とあったから、今ならもっと売れているのだろう。内容も面白いが、文章も軽妙で読みやすい。嫌みもたっぷりで1人でも多くの人に読んでほしい。

 著者はまず総論で、定年を「極める」「第2の青春」「輝く生き方」と手放しで礼賛する定年本に冷や水を掛ける。そのあとで定番になっている、老後の資金、生きがい探し、健康の維持という三つの主題について厳しく批判していく。

 そんなに不安がる必要はない。「なんとかでき、なんとかなる。たかが定年ではないか」。楽観的なのである。あまりにも楽観的なので心配してしまうほどだ。

 一番大事な老後資金についてはこう書く。「私の退職金は会社勤続34年で900万円もなかった」「夫婦合わせた年金は1か月21万5千円だ」。そして「自分のできる範囲で生活するしかない。いくら必要か計算することなんか意味はない」。見上げた心がけではないか。

 このような調子で生きがいや健康問題についても持論を展開し、きれいごと、カッコだけいい定年本をなで斬りするのだ。「お金に焦るバカ」「生きがいバカ」「健康バカ」とバカが多くて品がないのには閉口する。どうせ、売らんかな、の出版社の編集者にそそのかされて使ったのだろう。

 

著者に苦言

 

 定年本といえば、以前、この欄で取り上げて批判した「定年後」(中公新書、楠木新著)は20万部を超えるベストセラーになった。テレビ番組にもなってしまった。勇んで買った人は定年生活を迎える上で何か参考になったのだろうか。

 その本では定年後には社会とつながることを強調し、実行している人たちを紹介している。だが「定年バカ」の著者は「そんな実例は読み飽きたよ。社会とつながりたがるバカ」と見事に切り捨てる。そうだ、そうだよなあ。

 最後に著者に苦言を。著者は「定年後」シリーズの本をこれまで4冊も書いている。最後の本「さらなる定年後のリアル」(草思社文庫)の前書きで「柳の下に探すドジョウだってせいぜい2匹目なのに、4冊はしつこく、これで打ち止めである」と書いていた。

 それなのに、「定年後」という言葉を外して5冊目か。読者をバカにするな。そんなやぼなことは言わない。しかし、ひとことぐらい弁解があってもいいではないか。=敬称略

 (北風)

 

(KyodoWeekly6月11日号から転載)


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