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国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部

未開拓のテラヘルツ領域を拓く、高感度・広IF帯域ヘテロダイン受信機を開発

磁性材料を用いたNICT独自の超伝導素子構造によって実現

2020年9月1日
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

 
未開拓のテラヘルツ領域を拓く、高感度・広IF帯域ヘテロダイン受信機を開発 ~磁性材料を用いたNICT独自の超伝導素子構造によって実現~

ポイント
■ 磁性薄膜を用いたNICT独自の超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサ(HEBM)構造を開発
■ 2 THz帯ミキサとして世界トップレベル、量子雑音限界の6倍の低雑音性能と広IF帯域幅を達成
■ 高性能受信機、高安定発振器を実現するテラヘルツ帯基盤技術の確立に貢献

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、磁性材料を用いた独自の超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサ(HEBM)を開発し、2 THz帯ヘテロダイン受信機の低雑音化と広IF帯域化を実現しました。これは、本技術が、従来困難であったHEBMの極微細化を可能にしたことにより、実現したものです。今回作製した2 THz帯HEBMは、量子雑音限界の6倍程度である約570 K(DSB)の低雑音性能と、従来構造のHEBMと比べ約3 GHz拡大した約6.9 GHzの広IF帯域特性を達成しました。これらは共に世界トップレベルの性能です。
 本技術は、未開拓周波数領域であるTHz周波数領域における基盤技術として、高速無線通信、非破壊検査、地球環境計測、電波天文などの新たな周波数資源開発に資するものと期待されています。なお、本成果は、2020年9月3日(木)~4日(金)の国際フロンティア産業メッセ2020にて、発表・展示されます。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009013720-O9-UGsT6hJ9
 
背景
 テラヘルツ周波数領域は、十分な開発や利用が進んでいない未開拓周波数領域であり、高速無線通信、非破壊検査、セキュリティ、医療、地球環境計測・電波天文などへの応用が期待されています。しかし、その実現には、基盤技術である発振・検出技術の開発が重要です。
 これまで、1 THzまでの周波数領域においては、超伝導SISミキサが最も低雑音、広IF帯域の優れたヘテロダイン受信機性能を報告しています。しかし、その動作の上限周波数は1.5 THz程度と考えられており、1.5 THzを超える周波数領域での低雑音ミキサ素子として、現在、HEBMの研究・開発が進められています。
 1.5 THzを超える周波数領域において、HEBMが量子雑音限界の10倍を切る低雑音受信機動作を示すことは、既に報告されています。しかし、HEBMには、一度に観測できる情報量を意味するIF帯域幅が狭いという、応用に向けて解決すべき課題がありました。IF帯域幅として20 GHz以上を確保できる超伝導SISミキサに対し、HEBMでは、その4分の1未満の3〜5 GHzでした。IF帯域幅の拡大は、応用上メリットが大きく、HEBMの広IF帯域化が求められていました。

今回の成果
 NICTは、テラヘルツ研究センターにおける未来ICT研究所及び電磁波研究所の研究連携の下、テラヘルツ波での基盤技術である検出技術として、磁性材料を用いた新構造の超伝導ホットエレクトロンボロメータミキサ(HEBM)を開発、2 THz帯ヘテロダイン受信機の低雑音性能と広IF帯域幅を実現しました。

 
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202009013720-O7-6Xc691Ey】 図2 従来型及び磁性薄膜を用いたHEBMの概略図

 HEBM は、二つの金属電極間に、微小超伝導薄膜片(超伝導ストリップ)を配置した構造で、超伝導 – 常伝導転移間で生じる強いインピーダンス非線形性を利用したミキサ素子です(図 1 ( a )参照)。今回、超伝導–金属電極薄膜間に磁性材料であるニッケル( Ni )薄膜を挿入することにより、電極間の超伝導ストリップにのみ超伝導性を残す、 NICT 独自の新たな HEBM 構造を考案・開発しました(図 2 ( b )参照)。この構造によって HEBM の更なる微細化が可能となり、検出器の低雑音化と共に IF 帯域の広帯域化を実現しました。

 今回、超伝導ストリップ長0.1 μmの微小HEBMを作製、測定周波数2 THzにおいて、入力光学系の損失を補正したミキサ雑音温度としてTrx=570 K(DSB)が得られました。これは、量子雑音限界の約6倍の極低雑音動作です。また、IF帯域幅は、従来構造のHEBMと比べて約3 GHz拡大した約6.9 GHzが得られ、磁性材料を用いた新HEBM構造が、受信機性能向上に有効であることを確認しました。これらの結果は、実際の動作温度である4 Kで評価した結果であり、テラヘルツ帯HEBMとしては、共に世界トップレベルの性能にあると考えています。

今後の展望
 NICTは2 THz帯HEBMの実用化を目指し、これまで採用していた平面アンテナを用いた準光学型と呼ばれるHEBMから、よりきれいなアンテナ指向性を有する導波管型HEBMの開発に取り組んでいます。同受信機技術を基に、THz周波数領域における基盤技術を確立し、さらに、地球環境計測、電波天文などのリモートセンシング技術への応用展開を目指します。

論文情報
論文名: Broadening the IF Band of a THz Hot-Electron Bolometer Mixer by Using a Magnetic Thin Film
掲載誌: IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology, Vol. 8, No. 6, November 2018
DOI: 10.1109/TTHZ.2018.2874355
著者: Akira Kawakami, Yoshihisa Irimajiri, Taro Yamashita, Satoshi Ochiai, Yoshinori Uzawa

 なお、本研究の一部は、大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台との資金受入型共同研究契約「ミリ波からテラヘルツ帯での超高感度・高速受信技術の基盤研究」の助成を受けて行われました。

図1 HEBMの構造と顕微鏡写真
図2 従来型及び磁性薄膜を用いたHEBMの概略図
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