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国立大学法人電気通信大学

見えないものを見る―:生体組織越しの細胞観察に期待

2020/2/5

国立大学法人 電気通信大学 情報理工学研究科基盤理工学専攻

国立大学法人電気通信大学大学院情報理工学研究科の渡邉准教授らは、In-line型位相シフトデジタルホログラフィを応用して生体組織越しのイメージング手法を開発しました

国立大学法人電気通信大学大学院情報理工学研究科の渡邉准教授らは、In-line型位相シフトデジタルホログラフィを応用して生体組織越しのイメージング手法を開発しました。

発表本誌リンク:http://proxy.osapublishing.org/ao/abstract.cfm?uri=ao-58-34-G345

渡邉研究室
https://thetis.f-lab.tech.uec.ac.jp

電気通信大学情報理工学研究科 基盤理工学専攻
http://www.es.uec.ac.jp

生体皮膚やすりガラスのような散乱媒体越しに物を見る技術は、医療分野において注目されています。現在まで多くの手法が提案されてきましたが、その中の手法の1つとして散乱媒体をスクリーンのように見立て、観察対象の情報を記録するデジタルホログラフィ(※1)を利用した手法が知られています。しかしながら、従来のOff-axis型(※2)では再生像の解像度において重要になる記録可能な空間周波数帯域の制限や散乱媒体を回転させることが必要であり、顕微イメージングが困難でした。

そこで渡邉准教授らの研究グループは、In-line型(※2)位相シフトデジタルホログラフィを応用し、散乱媒体背後の物体を顕微的にイメージングできる手法をStuttgart大学と共同で開発しました。In-line型位相シフト法によってこれまでの課題は改善され、すりガラスによって隠された約2.0 µmの物体を可視化するだけでなく、定量位相情報や3次元情報といった医療分野において細胞識別に有効な情報も取得できています。さらにこのイメージング手法は、多数の散乱層を含んだラットの皮膚背後に置かれた2.0 µmの物体も確認できました。本研究は、生体組織下にある従来の技術では確認できないような顕微物体を可視化する新しい手段になり、今後はこのイメージング手法を利用した医療デバイスの開発が期待されます。
この研究成果は、2019年11月13日にアメリカ光学会誌「Applied Optics」に掲載されました。

掲載された論文
タイトル: Three-dimensional microscopic imaging through scattering media based on in-line phase-shift digital holography
著者:  Shutaro Kodama, Manami Ohta, Kanami Ikeda, Yutaka Kano, Yoko Miyamoto, Wolfgang Osten, Mitsuo Takeda, and Eriko Watanabe
掲載誌:  Applied Optics
公開日:  2019 年 11月 13 日
本誌リンク : http://proxy.osapublishing.org/ao/abstract.cfm?uri=ao-58-34-G345

1. 背景技術
【散乱媒体背後のイメージング】
散乱媒体は、霧が視界を悪くするように、物体像を不明瞭に見せるため光学分野に限らず幅広い分野で障害となっていました。散乱媒体は霧、すりガラス、皮膚といった多分野において存在するため多くの手法が研究されています。現在盛んに研究されている主な手法では、光の振幅だけでなく位相や3次元情報といった空間的情報を一回の記録によって取得することは困難です。

【デジタルホログラフィを用いた利点と課題】
デジタルホログラフィによる手法は1960年代から行われており、スクリーンと見立てた散乱媒体に物体の情報が含まれた干渉縞を映し出し、レンズと撮像素子によって記録することで計算機上の画像処理において物体を再構成しています。本来、デジタルホログラフィは観察対象の振幅・位相情報の再構成が可能であり、医療分野ではデジタルホログラフィック顕微鏡として注目されています。しかしながら、従来のOff-axis型による散乱媒体背後イメージングは物体像に重ならないようにノイズを避ける必要があり、これが高解像度なイメージングの障害となります。また干渉縞がより細かくなるため散乱光に埋もれないように平均化処理を必要とするため、散乱媒体を回転させるなどの制限が課題となっていました。

2. 研究の概要
【改善手法によるイメージング】
今回、電気通信大学大学院の渡邉准教授らの研究グループは、従来のOff-axis型の光学系をIn-line型へ組み変え、位相シフト法を用いることで顕微イメージングへの課題を打破しました(図1)。物体に照射された光と基準の光を干渉させることで、物体のもつ3次元情報を2次元情報として干渉縞に閉じ込めます。この散乱媒体上に映し出された干渉縞は直接見ると散乱されてノイズ状になってしまいますが、レンズと撮像素子の簡易な光学系を組み合わせることで干渉縞を記録できます。計算機上では簡易な画像処理と光の伝搬計算によって物体を再構成するため、散乱の強さといった散乱媒体の情報を必要とせずに再構成が可能です。
散乱媒体にすりガラスを用いた基礎実験ではすりガラス越しに1.81 µmの微小物体の可視化に成功しました。さらに直径101 µmのプラスチックビーズの定量位相情報を正確に取得し、3次元的に配置された物体も計算機上で確認することができました。

【ラットの皮膚背後イメージングに成功】
すりガラス以外の散乱媒体として厚み0.652 mmのラットの皮膚を用いました。生体組織には細胞や血管が混在し、多数の散乱層を有しているためにすりガラス越しのイメージングよりも難しいです。しかしながら、伝搬計算する前の画像(図2の左)からは物体のラインは全く見えませんが、多数の散乱層を有する生体組織越しでも光の伝搬計算によって明瞭な幅2.0 µmの物体が確認できました。これにより皮膚で覆われた細胞や血管、筋肉の微細構造を摘出せずにイメージングできる可能性を示しました。

3. 研究の成果と今後の展開
本研究では、In-line型位相シフトデジタルホログラフィを利用して生体組織背後に置かれた2.0 µmの微小物体を確認できる手法の開発に成功しました。またこれらの光学系を小型にすることで生体内の細胞を摘出することなくイメージングできる可能性が示唆されます。

用語解説
※1 ホログラフィ
物体からの光(物体光)と基準となる光(参照光)を干渉させることで、物体の3次元情報をホログラムとして閉じ込めます。このホログラムに参照光を当てることで物体が無くてもその場に物体があるように見えます。デジタルホログラフィでは干渉縞を記録する際にカメラなどの撮像素子を用いて電子情報として記録し、計算機上で再構成します。

※2 Off-axis型とIn-line型
干渉させる際に必要な物体光と参照光の配置の違いを示しています。Off-axis型は再構成時に物体と重なるノイズを避けるために、物体光と参照光に角度をもって干渉させます。これにより、ノイズは重なりませんが、再構成像の一部しか物体に割り当てることができないため、顕微イメージングとしての性能が低下します。それに対してIn-line型では同軸上で干渉させるため再構成像全体を物体に割り当てることができますが、逆にノイズが重なるといったデメリットも起きます。しかしながら、今回このノイズの重なりは位相シフト法という簡易な画像処理によって回避されています。

In-line型位相シフトデジタルホログラフィによる散乱媒体越しのイメージング概要
光の伝搬計算前(左)と計算後の物体像(右)
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