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公益財団法人東京都医学総合研究所

シナプスの可塑性にプロテオグリカンが必要であることを解明

2019/9/18

公益財団法人東京都医学総合研究所

シナプスの可塑性にプロテオグリカンが必要であることを解明

 公益財団法人東京都医学総合研究所(所在地・東京都世田谷区、理事長・田中啓二(たなかけいじ)) 神経回路形成プロジェクト 神村 圭亮 主席研究員及び前田 信明 客員研究員らは、経験依存的なシナプスの可塑性にプロテオグリカンの一つであるグリピカンが必要であることを明らかにしました。
 本研究は、環境変化や経験によってシナプスの構造と機能が変化し (シナプス可塑性)、動物の行動様式が適切に修正されるメカニズムを明らかにしただけでなく、自閉症や統合失調症などの精神・神経疾患の治療に役立つことが期待されます。
 研究成果は、2019年9月17日午前11時(米国東部時間)に米国科学雑誌『Cell Reports』にオンライン掲載されました。

【論文情報】
The HSPG Glypican Regulates Experience-dependent Synaptic and Behavioral Plasticity by Modulating the Non-canonical BMP Pathway
『グリピカンは非古典的BMP経路を介して経験依存的なシナプスと行動の可塑性を調節する』

【研究の概要】
 私たちの脳は非常に多くの神経細胞で出来ていますが、これらの神経細胞はシナプスと呼ばれる特殊なつなぎ目で繋がっています。これまで、動物を取り巻く環境が変化し、動物が新しいことを経験すると、シナプスの構造や情報伝達の効率が変化し、その結果、動物の行動が適応的に修正されることが明らかになっています。しかしながら、そのメカニズムはよくわかっていません。著者らは、ショウジョウバエを用いて、経験依存的なシナプスと行動の可塑的変化には、プロテオグリカンの一つであるグリピカン(注1)という糖タンパク質が必要であることを明らかにしました。
 これまでの研究からショウジョウバエ幼虫を飢餓状態におくと、哺乳動物のノルアドレナリンに相当するオクトパミンが分泌され、神経筋接合部におけるシナプスの数や幼虫の移動速度が増加することが分かっていました。今回、著者らはグリピカンの機能が低下すると、飢餓状態になってもシナプスの数や移動速度が変化しなくなることを見つけました。またグリピカンが異常なハエでは神経伝達物質であるグルタミン酸を受け取る受容体やシナプスの発達を調節するBMP (注2)のシグナルが異常になっていました。この結果はグリピカンがグルタミン酸受容体やBMPシグナルを調節することで、経験依存的なシナプス及び行動の可塑性を調節することを示しています。
 ヒトにおいてグリピカンが異常になると自閉症や統合失調症などを発症することが知られており、本成果はこのような精神・神経疾患の治療に役立つことが考えられます。

注1:グリピカン
プロテオグリカンと呼ばれる糖タンパク質の一つ。ヘパラン硫酸と呼ばれる糖が鎖のように繋がった糖鎖を持つ。
注2:BMP (Bone Morphogenetic Protein)
分泌型のタンパク質でシナプスや神経だけでなく様々な器官の発達を調節する。

【この件に関するお問い合わせ先】
公益財団法人東京都医学総合研究所
電話:03-5316-3109

飢餓時においてグリピカンはシナプスの数やハエの移動速度を調節する。
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