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消えた首相―危機感が薄いのは誰?

写真はイメージ

 政策目標は、具体的な政策手段があって効果的に達成できることは説明を要しない。

 7月末に希望する高齢者全員のワクチン接種という目標の達成率は4分の3程度だった。実現できなかった理由は何かを検証しなければ、これからの対策の実効性が問われるが、菅義偉政権は、例のごとく言いっぱなしですますらしい。

 ワクチン接種が頼みの綱だ、と今さら強調されても準備をおざなりにし、Go Toキャンペーンほど熱心ではなかった。国際的に見れば着手が遅れ、訪米成果として大々的に宣伝されたワクチン確保もとん挫気味だ。

 そのため急拡大した感染者数への対策には相変わらず「3密を回避する」にとどまっている。8月初めには医療体制崩壊を防ぐために自宅療養を拡大する感染者放置の方針を打ち出したが、これは感染抑制策ではないし、重症化リスクを高めるだろう。

 感染対策の効果が薄い理由を政府は「危機感が共有されていないため」と説明している。しかし、最も危機感が希薄なのは、政府自身だ。少なくとも政府と同じくらいの危機感は国民に共有されている。

 それにしても、見込み違いの失策が続いているのに、菅首相の存在感がない。緊急事態宣言の延長などについて記者会見で説明しているとはいえ、ほとんどニュースにならない。消えた理由は、二つある。一つは五輪報道だが、もう一つは、発信内容が新鮮さも力強さもなく、ニュース性が低いためだ。

 重大な局面なのに政府が明確な打開策を示せないのは、無能という以外にはない。政策効果がなければ、その理由を検証し、次の手に生かすのが政治の役割だろう。

 しかし、目標実現の具体的な手段がきちっと準備されないままに、場当たり的に手を打ち続けてきたから検証の方法もない。そのため具体的に何が問題であったのかを明確にできないから、有効な次の手が見いだせない。

 その上に、この政権には、失策を認めた上で、方針転換を模索するような謙虚さがない。失敗したことには口をつぐんで、批判が静まるまで首をすくめて待つ。このやり方は、安倍晋三前政権時代のスキャンダル以来、政府与党がとり続けてきた危機回避策である。

 政権存立に関わる危機は敏感に嗅ぎ分けて隠蔽(いんぺい)に全力を尽くすが、国民が直面する危機には鈍感らしい。だからこそ五輪開催にまい進し、これを菅首相は一時的に隠れみのにした。

 他方で、8月初めに与党幹事長は首相続投を国民は望んでいると発言したが、どこの国を見ているのか。政権維持のために注がれる力の万分の一でも感染対策に向けてもらえないだろうか。国民が望んでいるのは、「誰が」ではなく「何をするか」だ。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly8月16&23日号から転載)

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