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内容のない「空箱」―次は「お年寄り庁」?

写真はイメージ

 デジタル庁関連法案が衆議院を通過し、順調にいけば今年秋以降には新しい組織が姿を現すらしい。ただ、いまだに具体的にどんな問題をどう解決するのかは明確ではない。

 デジタル技術は、情報の処理の迅速さなどを実現することに有効であり、その技術によって情報処理が迅速化し、情報の処理・分析が可能になることは疑いない。

 しかし、デジタル技術は手段にすぎず、何に使うのかが明確でなければ、宝の持ち腐れになる。たとえば、政治家の資金の出入りをすべてデジタル処理することとし、不正な資金の出入りを監視できるようにして、現金の授受はすべて違法にするというのであれば、国民は支持するだろうが、政治家たちが同意しないだろう。

 何をするかが分からない点では、新登場の「こども庁」創設案にも共通する。国の宝だからといって、行政の縦割りを打破するという「決まり文句」で意義を強調しても、縦割りでどんな制約があり、何ができないかも検証せずに、選挙対策とも見えるような「言葉」だけが躍っている。

 この構想には立憲民主党の枝野幸男代表が、今国会中にも与野党協議で実現できると発言している。総選挙の目玉にしたい自民党は、それでは困るし、協議すべき内容も固まっていないに違いない。

 選挙民の歓心を買う言葉だけで、何ができるかの説明もないまま、とりあえず箱を作ること(新庁設置)が先走りし、あとから中身を寄せ集めようとしているとしか思えない。「空想的」なキャッチフレーズは、劇場型の政治の悪弊だが、選挙の争点にはならないだろう。

 中身のない空箱は、アメリカで新規上場が相次いでいる「特別買収目的会社」(空箱会社)という怪しげな利殖手段を連想させる。この手法は、事業内容の定めがない、つまり企業としては中身が空の上場会社を設立して金を集め、その資金で未上場企業を買収して、買収時の株価上昇でひともうけすることを意図している。

 この手法がアメリカの株価を押し上げてバブルを加速させている。危険極まりないことは疑いない。

 同様に、支持率の低下におびえる与党議員にとって、総選挙の看板になり、ついでに大臣の椅子も増やせるという皮算用だろうか。新庁構想は、委ねるべき行政領域が曖昧なまま、この「空箱会社」のようにあとからつじつまを合わせようとしているものだ。

 まずは現行組織のもとで司司(つかさつかさ)に任せて、できる対策を直ちに講じる方が国民の利益になる。その上で何ができないかを明確にして、新設庁に委ねる政策課題を明確にするのが手順ではないか。もっとも、そんな手順抜きに、政府・与党は選挙に勝つための看板を必要としている。菅義偉さん、次は「お年寄り庁」でもつくりますか。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly4月19日号から転載)

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