政治
政治・経済・国際の解説・分析記事

「デモクラシーの現場から」一進一退の政権運営

写真はイメージ

 菅政権は4月3日で政権発足から200日を迎えた。2021年度予算を成立させ、後半戦に突入した国会では、看板政策に掲げるデジタル改革関連法案など重要法案の成立を急ぐ。ただ、最優先課題の一つである新型コロナウイルスの感染抑止は進んでおらず、一進一退の政権運営が続く。

 

 

 「常に国民目線で物事を考えてほしい。私自身、政治を志して以来、幅広い声に耳を傾け、国民から見て当たり前のことは何であるかを常に見極めながら、政策を考え、実行してきた」。菅義偉首相は4月7日、国家公務員の合同初任研修に参加した新人職員向けにビデオメッセージの訓示を寄せた。総務省幹部の接待問題を念頭に「常に謙虚に、己を律しながら、国民全体の奉仕者として職務に当たってほしい」と付け加えるのを忘れなかった。

 首相の長男による総務省幹部への接待問題や、新型コロナの緊急事態宣言下の深夜に東京・銀座のクラブを与党幹部が訪れ批判を招くなど国会論戦は、野党が攻勢をかけた。だが、コロナ対策の予備費などを盛り込んだ21年度予算は3月26日に成立した。安倍晋三政権下では20年度予算が昨年3月27日に成立し「スピード成立」と表現された。それよりも1日早い成立に関し、首相は周囲に「俺の行いが良いからだろ」と軽口をたたいたという。

 国会での予算成立後のあいさつ回りを終えた首相は、官邸に戻り報道各社のインタビューに応じ「与党だけでなく、野党の皆さんにも御礼を申し上げたい」と述べ、安堵の表情を浮かべた。国会答弁が「棒読み」(野党幹部)で、当意即妙なやりとりが得意とは言えず予算審議が停滞するとの見方もあっただけに、政権幹部は「運の良さはある」と語る。

 予算成立で勢いがついたのか首相は4月に入り、新たな政治決断に踏み切った。子ども関連政策の司令塔となる「こども庁」の実現に向け自民党に指示を出した。教育や医療など複数の省庁にまたがる政策を一元化することで、少子化問題の解消にもつなげることを狙うというものだ。元々は自民党の中堅、若手有志議員が中心となり提言を取りまとめ、首相に提出した経緯がある。

 具体的な検討課題としては、幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省、認定こども園は内閣府に分かれる所管一元化の是非が挙げられる。貧困や虐待防止対策をこども庁が担うかどうかも議題となり「省庁再編につながる大きなテーマ」(自民党の下村博文政調会長)だ。

 首相は4月5日の参院決算委員会で「施策の縦割りを打破し、組織の在り方を抜本から考えることが必要だ。日本の未来という大きな視点に立ち、まずは党内で検討してほしい」と述べた。自民党は13日、こども庁創設に向けた総裁直属組織を新設し、議論をスタート。次期衆院選をにらみ、子育て世代にアピールできるとの思惑も透ける。本部長には二階俊博幹事長が就任。本部長代行には下村氏を起用し、厚労相、文科相経験者らが常任顧問に名を連ね「船頭多き出発」(若手)となった。

 首相はさらに重大な政治決断を下した。東京電力福島第1原発処理水の海洋放出の決定だ。東日本大震災の原発事故により、福島第1原発では、溶融核燃料(デブリ)を冷やすための注水や流入する地下水などで現在も処理水が増え続けている。

 処理水を保管するタンクの容量は22年秋以降に限界を迎えるとされる。首相は官房長官時代から海洋放出の必要性に理解を示しており、首相就任後も「いつまでも先送りすべきではない」と繰り返し主張してきた。容量が限界となる時期と、東電が放出計画や設備について原子力規制委員会の審査を受けるといった手続きを勘案すると、海洋放出の判断は「ギリギリだった」(政府関係者)という。

 しかし、震災から10年が経過し、風評被害の払拭に地道に取り組んできた漁業者の努力を無視した独善的な判断に、世論の反発も強まる。首相は4月13日、海洋放出決定後に「私自身は、これから説明し、ご理解いただけるようにしていきたい」と記者団に語った。海洋放出は約30年にもわたるとされる。地元・福島県の多様な意見を聞き、ボトムアップで合意形成を図るのが筋であり、方針決定後に理解を求めるトップダウン型の手法がなじまないのは明白だ。

 立憲民主党の安住淳国対委員長は「首相は『決める政治』をやることが、決断力のあるリーダーだと思わせたいのかもしれないが、科学的根拠や国民、福島含む被災地の理解を得ずしては進まないことを警告しておきたい」と批判する。

 

真価

 

 「ハンバーガーが用意されたが、手を付けずに終わってしまった。そのぐらい会話に熱中した」。首相は4月17日(日本時間16日)、訪問先のワシントンでバイデン米大統領との首脳会談を振り返り、信頼関係構築に自信をのぞかせた。

 首脳会談では、覇権主義的な動きを強める中国を意識した共同声明を発表。日中国交正常化前の1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領以来となる「台湾」に言及。日米が足並みをそろえ中国をけん制した。18日午後に帰国した首相は「達成感に満ちていた」(周辺)という。

 だが、首相は高揚感に浸ったままでいる暇はないだろう。コロナウイルスの感染拡大は勢いを増す。訪米時に首相は米ファイザー幹部と電話会談し、コロナワクチンの追加供給で実質合意した。接種対象の16歳以上全員分のワクチンが9月末までに調達できる見通しとなったものの、順調に行き渡るかは不透明さがつきまとう。

 首相はワシントンで同行記者団に対し、自民党総裁続投の意向を問われ「衆院を解散し、勝たなければ(政権は)続かない」と意欲をにじませた。衆院解散には「コロナ対策をやり遂げる」という前提条件が付くのが首相の持論でもある。

 感染抑止を含む政策実現に加え、処理水問題、東京五輪・パラリンピック開催、米中対立下の外交など課題は山積する。併せて4月25日には「菅政治」への中間審判と位置づけられる衆院北海道2区、参院長野選挙区の両補欠選挙と参院広島選挙区再選挙の結果が出る。「国民のために働く内閣」を標榜する首相の真価が問われる時期を迎えたのは間違いない。

(共同通信政治部次長 倉本 義孝)

 

(KyodoWeekly4月26日号から転載)

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ