政治
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「デモクラシーの現場から」感染リスク抱え、波乱含みの政局始動

後手対応否めず

 

 新型コロナウイルスの感染拡大に始まり、安倍晋三前首相の突然の辞任、菅義偉首相の誕生など2020年の日本の政治は大揺れの1年だった。21年は夏に東京五輪・パラリンピック開催が予定される。衆院議員任期は10月までとなり、首相がどのタイミングで衆院解散のカードを切るのかどうかに注目が集まる。

 「1年間いろんなことがあった」。菅首相は年末も押し迫った昨年12月19日、東京都内で開かれた「2020年報道写真展」を鑑賞後、記者団に1年間をそう振り返った。

 安倍政権の継承を掲げ、順調なスタートを切ったかに見えた9月から約3カ月半が経過した今、首相を取り巻く環境は厳しさを増している。昨年12月上旬に実施した共同通信社の全国電話世論調査で、菅内閣の支持率が50・3%と前回11月から12・7ポイント急落。一部報道機関の世論調査では不支持率が支持率を上回った。

 コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、官房長官時代から金看板として掲げてきた観光支援事業「Go To トラベル」が年末年始に全国での一時停止を余儀なくされた。専門家が5人以上の飲食で感染リスクが高まると注意を促す中、自民党の二階俊博幹事長らと大人数で高級ステーキ店で会食し批判を浴びた。コロナ対応が「後手に回った」(枝野幸男・立憲民主党代表)との印象は拭えず、首相のちぐはぐな対応が目立った。

 「国民の誤解を招くという意味においては、真摯(しんし)に反省をいたしております」。首相は12月16日、大人数での会食について記者団のぶら下がり取材で陳謝した。だが、コロナ感染拡大を巡る対応については民放番組で「一番大切にしているのが専門家の判断だ。私どもは素人だ」と開き直るような発言を繰り返した。そこには「決断し、責任を取る政治」(首相の著書「政治家の覚悟」より)とはほど遠い首相の姿があった。

 首相は「ぶれることを嫌う」(閣僚)という。官房長官時代から政治主導によるトップダウンの政策決定を志向してきた。しかし、ぶれないというかたくなさが柔軟さを欠く政治決断の要因となっているのは否めない。

 20年の政治は新型コロナウイルス禍の対処が問われ続けた1年だった。安倍政権下での緊急事態宣言や布マスクの全戸配布、一律10万円給付事業の決定過程の混乱など、これまでの危機管理対応が通じず、時の政権はコロナに翻弄(ほんろう)された。体調悪化を理由に辞意を表明した安倍前首相は11月の共同通信社のインタビューに「今から考えれば『あの時そうやっておけば良かった』というのはいくらだってある。ただそのとき、果たして、それができたかということは分からない」と述べた。

 

ワクチンが命運左右

 

 「国民の皆さんに成果を実感していただきたいという気持ちでこの3カ月間、全力で取り組んできた」。首相は昨年12月中旬、東京都内で講演し、2050年の温室効果ガス排出量の実質ゼロ目標や不妊治療の22年度当初からの保険適用、携帯電話料金引き下げの実現などを列挙しながら成果をアピールした。

 内閣支持率の挽回に躍起となる首相だが、今年1月18日召集の通常国会は野党側の厳しい追及が待ち構える。安倍前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜の夕食会を巡る問題に加え、鶏卵生産大手による吉川貴盛元農相らへの現金提供疑惑を抱える。もちろん猛威を振るうコロナの感染を阻止することが21年も日本政治の最重要テーマとなるのは言うまでもない。対策を誤れば、内閣支持率の下落に拍車が掛かり、政権の責任問題に発展するのは必至だ。

 米製薬大手ファイザーは昨年12月18日、開発したコロナ感染症のワクチンを厚生労働省に承認申請した。田村憲久厚労相は関係部署に最優先で迅速に対応するように指示。政府は早ければ今年2月にも承認するかどうかの結論を出したい意向だ。政権幹部は「ワクチン接種が政権の命運を左右する」と語る。

 ワクチン接種が実現し、国内の感染抑止にめどが付けば、首相にとって追い風になる。1月末までに20年度第3次補正予算案を成立させ、21年度予算案についても3月末までの年度内成立を確実にすれば、首相が政権運営でフリーハンドを得る可能性は残る。

 

潮目の変化

 

 首相は昨年12月4日、臨時国会の事実上の閉幕を受けた記者会見で、衆院解散・総選挙の時期に関し「いつか選挙を行う必要があるので、時間的な制約を考えながら、よくよく考えていきたい」と含みを持たせた。

 ワクチン接種を含むコロナ対策が奏功し、21年度予算案の成立時期などを総合的に判断し、首相は解散のタイミングを検討するとみられる。

 今年は6月下旬か7月上旬に実施される見通しの東京都議選や、夏の東京五輪・パラリンピックなど重要日程が立て込む。都議選と衆院選を合わせる同日選に公明党は「非現実的」(石井啓一・公明党幹事長)と否定的だ。そのため想定される解散の時期は、21年度予算案の成立を見込む3月下旬以降や、夏の東京五輪・パラリンピック後との見方が永田町でささやかれる。

 最近、首相は周囲に「コロナが収まれば、解散はいつでもできる」と語ったという。だが「政治は一寸先は闇」(閣僚経験者)だ。コロナ対応の失態で菅内閣の支持率が一気に急落したのが、その証左といえる。与野党内で「潮目が変わった」との声も漏れ始めた。支持率の低迷が続けば、衆院議員の任期満了間近で他の日程を選べない「追い込まれ解散」や解散に踏み切れない事態となる危うさをはらむ。コロナウイルスという予測不能なリスクを抱えながら、波乱含みの政局が始動したのは間違いない。

(共同通信政治部次長 倉本 義孝)

 

(KyodoWeekly12月28日/2021年1月4日号から転載)

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