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石炭火力廃止の本気度―抑制できるか電力村の利害

 何かと、つじつま合わせが横行するのが政治の世界らしい。コロナ感染症対策で新規感染者数が増えても、それは検査数が増えたからと言い逃れる。その言葉には検査が拡充できなかったことへの反省の色は見えない。

 同じような口先だけの政策転換になることが危惧(きぐ)されるのが、旧式石炭火力発電の休廃止方針である。それは温暖化対策に腰が据わらなかった政府のエネルギー政策の方向転換という限りでは歓迎すべきことだ。

 ただ、新式の効率のよい石炭火力は更新・拡張を考慮しており、2030年度でも石炭依存度は約4分の1と先進国のなかでは格段に高い水準を維持する方針は変わらない。

 送電網の利用などについて改善を進めるとはいっても、再生可能エネルギーの拡充に全力を尽くすような根本的な転換を明言することは避けている。

 この曖昧な態度は、石炭火力の削減が進む中で温室効果ガス削減のためには「やはり原子力が不可欠」と言い出す余地を残している。

 一方、原子力発電については、新設はいうまでもなく、再稼働にも大きな制約が横たわっている。客観的にみれば、再生可能エネルギーを主力電源とする将来像を描き、そこに向かってどのように進むのかを明確にすべき時がとっくにきている。

 政府はお得意の有識者会議で議論をするといっているが、経済産業省が所管する会議に根本的な政策転換は期待できないだろう。「原子力村」という言葉がかつて批判の対象となったが、経産省と電力会社を包摂する「電力村」の利害を抑えられるような枠組みが必要だ。

 多様な意見を聞くことにして、半数は「脱炭素社会」推進策の専門家とし、環境省と共管にしたらどうか。さもないと「不都合な真実」には目をつぶり、従来の方針の微修正にとどまる心配がある。

 経済発展には高いエネルギーコストは制約になることなどを理由に、政策転換に慎重な人たちがいるが、経済を優先したところで、経済活動の場が温暖化によって脅かされては、何にもならない。

 今直面している危機でも、感染対策と経済対策の優先順位が問われているが、経済を優先して国民の多くが感染症によって平穏な生活を奪われることがあってはならない。

 同じように、将来のエネルギーを考える時にも、目先の問題を口実に今なすべきことを後回しにすべきではない。放置すれば、私たちの子どもや孫たちに確実につけが回る。将来世代の犠牲のもとに現役世代が安逸に過ごすことを選ぶとすれば、それはもはや犯罪だろう。

 脱炭素社会構築のための取り組みが本格化している欧州諸国に対して、日本政府のその場しのぎは通用しない。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly7月27日号から転載)

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