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「陸海空の現場~農林水産」「種子ビジネス化」 第2ラウンドへ

 農業の根幹である種(たね)や苗の開発と利用をめぐり、水面下で攻防が始まっている。農林水産省は年明けの通常国会に種苗法の改正案を提出する方針で、農家が収穫物から種などを採取して次の栽培に使う「自家増殖」の制限が焦点だ。

 政府は「種子産業への民間企業参入を促す」として、昨年4月に主要農作物種子法(種子法)を廃止。都道府県が農業試験場などで長い時間とコストをかけて開発した稲、麦、大豆の種子開発のノウハウを、事実上無償で民間事業者に譲渡する態勢を整えた。

 この官邸主導の「種子のビジネス化」に対しては、自治体側から強い反発があり、実質的に種子法を復活する条例が、北海道、新潟、兵庫、埼玉などすでに13道県で制定されている。自治能力を示した点で特筆するべき動きだ。

 種子法廃止を第1ラウンドとすれば、種苗法改正は第2ラウンドと言える。改正案は、種苗の海外への持ち出しを厳罰化するほか、現行では原則自由の「自家増殖」(自家採種、接ぎ木、挿し木などによるコピー)について開発者の許諾を必要とする2本柱だ。

 農水省は改正の背景として、日本で開発されたブドウ「シャインマスカット」の苗木やイチゴが持ち出され、中国や韓国で栽培され東南アジアに輸出されている事例を問題視した。

 しかし、これは本筋とは思えない。優良品種の海外流出は、国内法である種苗法の改正では防げないからだ。厳罰化しても種の密輸を物理的に阻止することは不可能であり、実効的な対策としては中国や韓国などの生産地、さらにその輸出先で種苗登録するしかない。真の狙いは知的財産権の保護強化による「種子ビジネス促進」にあるとみてよいだろう。

 確かに、種苗の開発費用は巨額であり、それを適切な対価で回収できる仕組みは不可欠だ。

 ただ、膨大な投資に耐えられるのはダウ・デュポンやバイエルなど巨大なグローバル企業数社に絞られる。こうした外国企業に種苗を握られれば、農家の収益が吸い上げられるだけではなく、食料安全保障が脅かされる恐れがある。

 種苗法の改正は、何のため、だれのためかという原点を明確にして議論するべきだ。特に自家増殖の制限は将来に禍根を残す恐れがあり、熟議が必要ではないか。

(共同通信アグリラボ所長 石井 勇人)

 

(KyodoWeekly12月23日号から転載)

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