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安倍さんの〝全員野球〟―監督の責任はどこに?

 成長戦略を担う未来投資会議が新設され、安倍晋三首相は全世代型社会保障への改革に向け、首相が先頭を切って、「安倍内閣の関係閣僚はまさに〝全員野球〟の精神で、内野外野の区別なく改革に向けた具体的な検討を進めていただきたい」とあいさつした。

 この全員野球に違和感を持つ人は少なくないだろう。もともと高校野球などでチーム力の弱いチームが一丸となって難敵に立ち向かう姿を表現した言葉であるのだから、政治のプロ集団の取り組みにふさわしいとは思わない。それとも自ら高校生並みを自認したのであれば、もう少し謙虚であるべきだろう。

 それだけではなく、本来の意味での全員野球であれば、「内野外野」だけでなく、ベンチ入りメンバーも、そして応援席にいる多数の部員たちも、応援団も力を合わせて戦うことになる。だとすれば、少なくとも閣外の与党議員の意見も広く聞き、それらの力を合わせることでようやく全員野球に近づく。

 しかし、首相にはそうした視点は希薄なようだ。言葉だけが元気よく叫ばれても、その使い方のなかに、周りを固めた側近頼りの実態が垣間見える。それでは全員野球ではなく、「9人野球」でしかない。

 もちろん、この言葉が政治の舞台で躍るのは、これが初めてのことではない。近いところでは、2009年に民主党の代表選で当選した鳩山由紀夫代表が、代表戦での対立を乗り越えて挙党態勢を構築するために「全員野球で日本の大掃除をしよう」と政権交代への意欲を表明している。

 その後に成立した鳩山内閣についても、新任の平野博文官房長官が「全員野球の布陣」と表現している。この内閣が行政能力欠如からたどった運命を忘れてしまったのだろうか。

 民主党の場合には、政権への求心力を強める意図があったといわれている。新発足した安倍改造内閣も同じなのだろうか。確かに今年9月の総裁選では地方票を大きく失い、党員の信認を得られたとは言い難い状態を露呈した。総裁の求心力は大きく損なわれている。自民党支持者のなかでも「他にいないから」という消去法の形で選ばれているにすぎないという現状を自覚したからこそ、全員野球を唱えざるを得なかったのかもしれない。しかし、そうであるなら広く力を合わせる必要がある。

 プロ野球ではシーズンが終わりに近づき、成績不振のチームの監督は自ら辞任を申し出て、責任の所在を明確にしている。

 鳴り物入りで始めたアベノミクスの3本の矢も、その後のさまざまな改革提言も、ほとんどが的に届かず、効果が見られない。日本経済は〝万年Bクラス〟に沈んでいる。本当の意味で未来志向の議論をするのであれば、経済政策の失敗を検証し、責任の所在を明確にするところからスタートすべきだろう。

(東京大名誉教授 武田 晴人)

 

(KyodoWeekly10月22日号より転載)


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