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「2017年社会保障展望」  支出抑制待ったなし

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働き方改革実現会議であいさつする安倍首相=2016年12月20日、首相官邸

働き方改革実現会議であいさつする安倍首相=2016年12月20日、首相官邸

2017年は、高齢化に伴って膨張する社会保障費の抑制や、安倍晋三首相が力を入れる「働き方改革」の議論が活発化しそうだ。特に社会保障に関しては、18年度に診療報酬と介護報酬のダブル改定が予定されていることから、今年はそれへ向けた重要な1年となる。

 

 

能力に応じた負担

国の予算に占める社会保障費の自然増を16~18年度の3年間で1兆5千億円、年平均5千億円の伸びに抑えるのが政府の目標。17年度予算案では当初6400億円の自然増が見込まれたため、1400億円圧縮する方策が昨年末に固まった。
その全体を貫く考え方は、一定の収入がある高齢者や現役世代には能力に応じてさらなる負担を求め、国の支出をなるべく抑えるということだ。1400億円の内訳は、医療分野950億円、介護分野450億円だ。医療費の自己負担に月ごとの上限を設ける「高額療養費制度」では、一定以上の収入のある70歳以上を対象に負担上限額を引き上げ、220億円抑制する。年収370万円未満で住民税を課税されている70歳以上の人(約1243万人)は現在、外来で上限が月1万2千円だが、今年8月には1万4千円に引き上げる。これが18年8月には1万8千円になる予定だ。
 
75歳以上の後期高齢者医療制度では、所得が比較的低い人の保険料を5割軽減する特例を今年4月から2割に縮小し、扶養家族だった人の保険料を9割軽減する特例も7割にして190億円削減を図る。また「医療療養病床」に長期入院する高齢者が払う光熱水費の値上げなどで20億円を圧縮する。
中小企業社員が入る協会けんぽへの国庫補助金は、財政に余裕があるとして17年度に320億円減らす。超高額の抗がん剤「オプジーボ」は、200億円の抑制効果を見込んで、今年2月に半額に値下げする。
介護保険については、40~64歳が支払う保険料の計算方法に関し、収入に応じた「総報酬割」という仕組みを今年8月から導入開始し、440億円を削減する。そのための関連法案は1月からの通常国会に提出する方針だ。大企業の社員や公務員ら1272万人は負担が増えるが、中小企業を中心に1653万人は負担軽減につながる。
介護サービスの利用者負担額に月ごとの上限を設ける「高額介護サービス費制度」では、中間所得層の世帯で今年8月から月額上限を7200円引き上げて4万4400円にし、10億円を減らす。

 

現役世代と高齢者の痛み分け

さらに政府は18年8月には、所得が高い高齢者らの介護サービス利用時の負担を2割から3割に増やす予定だ。介護の自己負担は原則1割だが、単身で年金収入だけの場合、年収280万円以上の人を15年8月、2割にした。厚生労働省はこのうち年収383万円以上の人について、3割に上げたい考え。対象者は最大で利用者全体の3%、約13万人の見通しだ。

現役並み所得の高齢者を3割負担にするのは、大企業社員の保険料が上がる「総報酬割」の導入と引き換えに、経済界が高齢者にも応分の負担を求めたことに対応した。いわば現役世代と高齢者の「痛み分け」だ。
今年から始まる制度改正を巡っては、財務省は要介護度が低い人向けのサービス縮小を求めていた。だが厚労省は、利用者の生活に影響が大きいことから大幅なサービス縮小は見送った。
介護保険の総費用は10兆円を突破し、25年には団塊世代が全員75歳以上になる。給付抑制の議論は今後も続くことが確実だ。政府は今秋以降、高齢者負担増や介護支出抑制の具体策検討に入るとみられる。
公的年金では、無年金の人を救済するため、年金を受け取るのに必要な加入期間(受給資格期間)を現行の25年から10年に短縮する改正年金機能強化法が16年に成立し、今年10月からは約
64万人が新たに年金を受けられるようになる見通しだ。さらに、将来の年金水準を確保する狙いの年金制度改革法も年末に成立し、18年度からは少子高齢化の進行を見通した支給額抑制が強化される。

 

「最大のチャレンジ」

政府は「働き方改革」に向け、関係閣僚や労使代表らによる「実現会議」(議長・安倍首相)を16年9月に立ち上げた。長時間労働の抑制やパートなど非正規労働者の処遇改善が柱だ。今年3月をめどに具体的な政策の実行計画をまとめる方針。アベノミクスの失速が指摘される中、安倍首相は働き方改革を「最大のチャレンジ」と位置付けており、実効性がある政策を打ち出せるかが焦点だ。

政府は16年6月に国内総生産(GDP)を600兆円に拡大することや待機児童解消、介護人材確保などを柱とした「1億総活躍プラン」を閣議決定した。
しかし、育児、介護と仕事を両立させるには、受け皿づくりだけでなく働き方そのものの見直しが必要との判断に至った。
少子高齢化の影響でサービス業などでは人手不足が年々深刻になっている。今後も働く人の数は減っていく予想で、人材確保のためには、新しい働き方を示して一人一人が効率よく働くと同時に、女性や高齢者らを労働力として取り込んでいくことが、今後の経済成長に不可欠だとの危機感が政府にはある。
正社員と非正規の待遇格差解消に向けては「同一労働同一賃金」が目標だ。政府は昨年末の働き方改革実現会議で同一労働同一賃金の実現のための指針案を提示。正社員と同じ仕事をする非正規の賃金は「同一の支給をしなければならない」と明記し、賞与や通勤費などの手当支給も必要だとした。政府は指針案に基づき労働契約法などの改正に向けた議論を進め、改正案を17年秋ごろ国会提出する。
政府の考え方が示されたことで、企業は法改正を待たずに賃金制度や職場環境の見直しを迫られる可能性もある。
 

長時間労働抑制の議論

一方、指針案は能力や成果、勤続年数の違いによる賃金差も容認しており、格差がどこまで是正できるかどうかは不透明なことも否めない。
待遇の差がある場合に企業がきちんと説明するよう義務付けることを労働側は求めていたが、結局指針案では触れられなかったことも懸念材料として残った。
指針案は基本給、賞与や通勤費などの手当のほか慶弔休暇といった福利厚生や教育研修、派遣労働者など項目ごとに考え方を整理。賃金の中でも比重が大きい基本給は、金額を決める基準を「職業経験・能力」「業績・成果」「勤続年数」に分類した。
仕事の成果や経験に基づく賞与などの手当と同様に、職業経験などが同じであれば非正規も同一待遇とした一方、違いがあれば「相違に応じた支給にしなければならない」と基本給の待遇差を容認した。
また仕事の内容や成果に関わらないとして、通勤費や深夜・休日手当のほか、休暇や食堂利用などの福利厚生は同一待遇を明記。派遣労働者は、同じ仕事をする派遣先企業の社員と同じ待遇にするよう求めている。
3月の行動計画とりまとめへ向け、年明けから本格化するのは長時間労働抑制の議論だ。
 

検討課題は三六協定見直し

15年12月に起きた電通の女性新入社員過労自殺などで「働き過ぎ」が大問題としてクローズアップされた。電通は今年、労働基準法違反容疑で書類送検されるとみられ、政府も長時間労働対策で成果を上げたい考えだ。
政府によると、日本で働く人の14年の労働時間は平均1729時間。ドイツやフランスよりも300時間前後多い。長時間労働は、育児や介護など生活との両立を妨げ、女性や高齢者が働き続けることを阻害したり、少子化や生産性低下につながったりしているとされる。政府は人口減少下での経済成長のためにも長時間労働抑制が不可欠だとしている。
具体的な検討課題は、労働基準法が定めた残業に関する労使協定(三六協定)の見直しだ。
現在は労使が合意すれば事実上残業が無制限となってしまう。これが過労死や過労自殺につながる長時間労働の温床になっており、上限の設定が検討される。自民党内には超過した場合の罰則を求める声もある。
このほか柔軟な働き方ができる環境づくりも進められる方向だ。65歳以上の継続雇用・定年延長に取り組む企業への支援や、ITを活用して在宅勤務をするテレワークの拡大、がんなど病気の治療と仕事が両立できる環境を整備する。外国人材の受け入れ拡大も議論されるとみられる。
(共同通信生活報道部長 古口 健二)

 

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