4月の映画

 ★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

Ⓒ2020 CG Cinema International / Theo Films / Tribus P Films International / ARTE France Cinema / UGC Images / DETAiLFILM / Eurospace / Scope Pictures / Wrong men / Rtbf (Televisions belge) / Piano

「アネット」(4月1日公開)★★★

初めて目にするようなダークでシュールなミュージカル

 レオス・カラックス監督が、ポップバンド「スパークス」のアルバムを原案に、映画全編を歌で語り、全ての歌をライブで収録したロックミュージカル。

 スタンダップコメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)と一流オペラ歌手のアン(マリオン・コティヤール)、その2人の間に生まれたアネットが繰り広げるダークな寓話(ぐうわ)を、独特の映像美で描き出す。昨年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。

 「ラ・ラ・ランド」風の楽しいミュージカルを予感させるような明るい曲調で始まるが、次第に、初めて目にするようなダークでシュールなミュージカルに変調する。幼児のアニーを人形にしたり、セックスや出産まで歌で語ったりするところを見ると、よくいえば独創的だが、実験的なミュージカルという印象。全体としては、オペラや演劇のにおいが強いと感じた。ただ、魅力的なシーンも多々あり、見終わった後は、妙に後ろ髪を引かれる。ドライバーの面目躍如の怪演も見ものだ。

 

ⒸKAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020

「TITANE /チタン」(1日公開)★

変態、ゲテモノ映画の類いに入る

 幼い頃、交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア(アガト・ルセル)。それ以来、彼女は「車」に対して異常な執着を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。

 殺人を重ね、行き場を失ったアレクシアは、ある日、消防隊長のビンセント(バンサン・ランドン)と出会う。

 昨年のカンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞したジュリア・デュクルノー監督作。前半は、暴力、殺人、セックス、汚物、タトゥー、ドラッグといった、下品で、グロテスクで、痛い描写を繰り返しながら、アレクシアのサイコキラーぶりを見せる。

 アレクシアがビンセントに引き取られ、互いに父と息子を求める孤独な2人が、疑似親子のようになっていくあたりから少々雲行きが変わりはするが、これは変態、ゲテモノ映画の類いに入るものだという印象は消えなかった。ここまで極端なものを見せなければ、愛が表現できないのか、という怒りや疑問を感じた。

 

Ⓒ 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved Wizarding World TM Publishing Rights (C) J.K. Rowling WIZARDING WORLD and all related characters and elements are trademarks of and Ⓒ Warner Bros. Entertainment Inc.

「ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密」(8日公開)★★

「ハリー・ポッター」魔法ワールドシリーズ最新作

 「ハリー・ポッター」魔法ワールドシリーズ最新作で、魔法動物学者ニュート(エディ・レッドメイン)の冒険を描くシリーズの第3弾。今回は、ニュートが、恩師のダンブルドア(ジュード・ロウ)や魔法使いの仲間たち、そしてマグル(非魔法族)とチームを結成し、史上最悪の黒い魔法使いグリンデルバルド(マッツ・ミケルセン)に立ち向かう様子が描かれる。

 前2作のジョニー・デップに代わってミケルセンがグリンデルバルドを演じ、ダンブルドアとの因縁が明らかになる。タイトル通り、かつて2人の間に一体何があったのかが、今回の話の軸になる。舞台は、英国からドイツに移り、ブータンにまでおよぶ。

 もう一つの見どころは、グリンデルバルドに対抗するためにダンブルドアが集めたメンバーと、ニュートとの間に見られるチームワークだろう。また、前2作同様、特撮を駆使して描かれる数々の魔法や魔法動物に加えて、巨大セットを組んで撮影された街並みも見ものだ。

 

Ⓒ2021 20th Century Studios. All rights reserved.

「マリー・ミー」(22日公開)★★★

ギャップ婚を描くロマンチックラブストーリー

 有名歌手のキャット(ジェニファー・ロペス)は、年下の売れっ子歌手バスティアン(マルーマ)との公開結婚式の直前、彼の浮気が発覚。失意の中、彼女は客席にいた見ず知らずの数学教師チャーリー(オーウェン・ウィルソン)を指名し、突然プロポーズをする。2人は互いを知るところから結婚生活を始め、次第に打ち解けていくが、キャットとバスティアンのデュエット曲「マリー・ミー」がグラミー賞にノミネートされて…。

 逆シンデレラとも呼ぶべき、前代未聞のギャップ婚を描いたロマンチックラブストーリー。最近、暗くて難解な映画が目立つせいか、ラブコメの王道を行くような、先が読める予定調和のストーリー展開がかえって心地よく感じられた。

 主役のロペスとウィルソンに加えて、キャットの取り巻きのスタッフやチャーリーの同僚といった脇役たちが活躍するのも楽しい。実は、こうしたラブコメの成否の鍵は脇役たちの描き方にあるという見方もできる。

 

Ⓒ2022「ツユクサ」製作委員会

「ツユクサ」(29日公開)★★★★

ある女性に訪れた小さな奇跡とは…

 小さな港町で暮らす五十嵐芙美(小林聡美)は、一見、楽しい毎日を送っているように見えるが、実は彼女が一人で暮らしているのには、悲しい理由があった。ある日、彼女は町に引っ越してきた謎の男・篠田吾郎(松重豊)と運命的な出会いをする。

 安倍照雄のオリジナル脚本を基に、平山秀幸監督が映画化。小さな隕石が芙美の車にぶつかる以外、劇的なことは何も起こらず、小さな港町に住む、限られた人々の日常を映すだけの地味な映画だが、温かみと悲しみが同居したような不思議な味わいを感じさせ、思わず笑ってしまうようなユーモラスなシーンもある。また、港町の風景の良さに加えて、隕石、酒瓶、草笛、ネックレス、写真などの小道具も効いている。

 小林と松重が体現する大人の恋にちょっとドキドキし、つらい過去を抱えながらも、今日を明るく生きる女性に訪れた小さな奇跡を見てほのぼのとした気分になった。小品の佳作という表現がぴったり当てはまるような映画。

(映画ライター  田中 雄二)

 

(KyodoWeekly4月25日号から転載)

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