2月の映画

 ★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

「ゴーストバスターズ/アフターライフ」(2月4日公開)★★★

1980年代のテイストが満載

 1980年代にブームを巻き起こした「ゴーストバスターズ」シリーズの続編。今回は、シリーズを監督したアイバン・ライトマンの息子のジェイソンが監督をした。

 シングルマザーのカリーは、息子と娘と共に、亡くなった父から相続した田舎町の荒れ果てた農家に引っ越す。ところが、父は、かつてゴーストバスターズの一員で、彼らがニューヨークでゴーストたちを封じ込めてから30年の時を経て、ゴーストが田舎町に出現する。

 この映画の根底にあるのは、家族の絆の再生であり、祖父の秘密を知り、後継者たらんとする孫娘が前作とのつながりを感じさせる。また、前作はもとより、80年代のテイストが満載だ。例えば、子どもたちの宝探しを描いた「グーニーズ」(85)や、怪物が田舎町を荒らす「グレムリン」(84)といった映画をほうふつとさせる。ただ、これらは前作ありきの懐かしさからくる感慨であり、前作を知らない若者たちの目にはどう映るのだろうかと思った。

 

Ⓒ2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

「ウエスト・サイド・ストーリー」(11日公開)★★★★

名作ミュージカルを新たに映画化

 名作「ウエスト・サイド物語」(61)を、スティーブン・スピルバーグ監督が再映画化。以前、スピルバーグにインタビューした際、「今は人が人を信用しなくなっている。そして今のアメリカは思想的にも半分に分かれ、信頼や信用がなくなってきている」と語っていたから、この題材なら、そうした問題も入れ込めると考えたのではないか。

 加えて、音楽の入れ方、ダンスの振り付け、色遣い、カメラワークなどにさまざまな工夫が見られ、61年版とは違ったものにしようというスタッフ、キャストの気概が伝わってきた。また、ヒロイン・マリア役のレイチェル・ゼグラーをはじめ、ラテン系の俳優を起用することによって、移民の問題をより鮮明に浮かび上がらせている。

 とはいえ、圧巻は、やはりスティーブン・ソンドハイム作詞、レナード・バーンスタイン作曲の歌曲の素晴らしさにある。今回は特に「アメリカ」と「マンボ」、そして「マリア」から「トゥナイト」への流れが印象に残った。

 

Ⓒ2021 BILLIE HOLIDAY FILMS, LLC.

「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」(11日公開)★★

ジャズ界の伝説的歌手の生涯を描く

 1959年に44歳の若さで死去した米ジャズ界の伝説的歌手ビリー・ホリデイの生涯を描いた伝記ドラマ。人種差別を告発する「奇妙な果実」を歌い続けたことで、FBIからターゲットとして狙われたエピソードに焦点を当てながら、波乱の生涯を描く。監督はリー・ダニエルズ。

 かつてダイアナ・ロスがホリデイを演じた「ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実」(72)という映画があったが、あれは“白人の監督が撮った黒人の映画”だった。それに比べれば、もちろん時代差はあるが、今回は“黒人監督が撮った黒人の映画”なので、最近、数多く作られている、実話を通して黒人が自分たちの立場を主張するブラックムービーとしての側面が際立っている。

 そして、「奇妙な果実」をクローズアップさせることで、ホリデイの別の面を描こうと試みてはいるのだが、その点では、当局との対立を強調し過ぎ、しかも彼女の人物像もあまり魅力的には描けていないので、感情移入しづらいのが難点だ。

 

Ⓒ2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「ドリームプラン」(23日公開)★★★

主張するブラックムービーの1本

 女子プロテニス界の歴史を変えたともいわれる、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹の父である、キングことリチャード(ウィル・スミス)の生き方を中心に、一家の物語を描く。

 娘を使って、スポーツを通しての成り上がりを画策するリチャードの計画立案力と実行力は確かにユニークであり、しかもわれわれは彼らが成功したことを知っている。

 だが、見方を変えれば、リチャードと妻のやり方は、一種の“毒親”や虐待の類として捉えられなくもない。ただ、この映画は、リチャードが決して聖人君子ではなく、多くの矛盾を抱えた頑固で気難しい男であることも同時に描いているから、単なる成功者の話では終わらない。そこには差別や貧しさの問題が横たわっているからだ。

 しかも、リチャードの人生訓を聞き、姉妹を演じた新人女優の見事なテニスのシーンや、黒人主体の話を見ていると、最近目立つ“主張するブラックムービーの1本”という見方もできる。

 

Ⓒ2021 20th Century Studios. All rights reserved

「ナイル殺人事件」(25日公開)★★★

「愛の数だけ、秘密がある」

 1978年に映画化されたアガサ・クリスティの「ナイルに死す」を、「オリエント急行殺人事件」に続いてケネス・ブラナーの監督・製作・主演で再映画化。クリスティの実孫で、製作総指揮のマシュー・プリチャードは「観客に、アガサ・クリスティの世界を体験してもらうことが重要だった」と語っている。

 エジプトのナイル川を巡るクルーズ船の中で、大富豪の娘リネット(ガル・ガドット)が何者かに殺害される事件が発生。容疑者は彼女の結婚を祝うために集まった乗客全員だった。名探偵エルキュール・ポアロ(ブラナー)は“灰色の脳細胞”を働かせて事件の真相に迫っていくが…。

 今回は、冒頭に若き日のポアロを登場させ、彼の心の傷となった出来事を描き、その人物像に深みを持たせた。また、登場人物の設定を変えるほか、新たな人物を登場させるなどして、前作との違いを際立たせている。ピラミッドをはじめ、ナイル川流域に点在する遺跡群が見ものだ。

(映画ライター  田中  雄二)

 

(KyodoWeekly2月28日号から転載)

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