1月の映画

 ★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

Ⓒ2021「決戦は日曜日」製作委員会

「決戦は日曜日」(1月7日公開)★★★

選挙運動の裏側をシニカルに描く

 地元に根強い支持層を持ち、当選を続ける衆議院議員の秘書を務める谷村(窪田正孝)。ところが、議員が病に倒れたことから、娘の有美(宮沢りえ)が地盤を引き継ぎ選挙に出ることに。政界に無知、自由奔放、お嬢さま育ち、けれども謎の熱意だけはある有美に、谷村が振り回される日々が始まった。

 選挙運動の裏側とハウツー、2世議員の実態などをシニカルに描いたポリティカル(政治)コメディー。監督・脚本は「東京ウィンドオーケストラ」(2017)や「ピンカートンに会いにいく」(18)など、コメディー映画を得意とする坂下雄一郎。

 全体のテンポがよく、個性的な選挙事務所の面々や、後援会、県議会や市議会といった有象無象の連中(渋い脇役)たちが、皆生き生きと描かれているのも高ポイント。フランク・キャプラ監督の「スミス都へ行く」(1939)や、アイバン・ライトマン監督の「デーヴ」(93)といった、政治を扱った旧作映画をほうふつとさせるところもある。

 

Ⓒ2021 CTMG. Ⓒ & TM 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」(7日公開)★★★

“ホームシリーズ”三部作の完結編

 ミステリオによって正体を明かされてしまったピーター(トム・ホランド)は、悩んだ末に、自分がスパイダーマンだという事実を人々の記憶から消すことを、ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に頼み込む。だが、呪文の途中で口出しをしたために、この世界に別の世界の強敵たちを呼び寄せてしまう。ピーターは彼らを必死に元の世界に戻そうと試みるが…。

 前作「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」(2019)のラストから始まる、“ホームシリーズ”三部作の完結編。あっと驚くゲストも登場し、本来は別作品のキャラクターが入り乱れて、日本のウルトラ兄弟や仮面ライダー、戦隊ヒーローもののような展開を見せる。

 その結果、未熟な高校生ピーター=スパイダーマンの成長と、MJとの恋の行方はもとより、この三部作、というよりも、これまでに作られたスパイダーマンシリーズ全体を総括するような流れになった。とはいえ、ラストはちょっと切ないのだが…。

 

Ⓒ2021, LETTERBOX FILMPRODUKTION, SÜDWESTRUNDFUNK

「アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド」(14日公開)★★★

人間と人工知能(AI)の恋の行方は…

 ベルリンの博物館でくさび型文字の研究をしているアルマ(マレン・エッゲルト)は研究資金を稼ぐため、ある企業が実施する極秘実験に参加する。それは、ドイツ人女性の恋愛データを基に、アルマの性格とニーズに完璧に応えられるようプログラムされ、抜群のルックスと穏やかな性格、豊富な知識を持つAIのトム(ダン・スティーブンス)と3週間暮らすというものだった。

 人型ロボットが登場する映画は多いが、人間とAIの恋を描いたものは珍しい。ただ、この映画の場合は、ちょっとしたしぐさ以外は、見た目はほとんどロボットらしさがない美男が相手なので、SFというよりも、普通の恋愛劇を見ているような気分になる。

 ところが、アルマの性格描写に曖昧なところが多いので、見終わった後で、もやもや感が残るのだが、それは男目線故で、女性が見たら共感できるものなのだろうかとも思った。このあたり、最近のジェンダーを扱った映画の評価は本当に難しいと感じた。

 

Ⓒ2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

「クライ・マッチョ」(14日公開)★★★★

監督デビュー50周年記念作

 今は落ちぶれたかつてのロデオスターが、親の愛を知らない少年とともにメキシコからテキサスを旅する中で「本当の強さ」の新たな価値観に目覚めていく姿を描くロードムービー。クリント・イーストウッドの監督デビュー50周年、40作目に当たる。脚本は「グラン・トリノ」(08)、「運び屋」(19)に続いてニック・シェンクが担当した。

 90歳を超えたイーストウッドの緩慢な動き、聞き取りにくいせりふ、逃亡劇なのに緊迫感がなく、全体的に緩い感じがするのだが、逆にそこが魅力的に映るという、不思議な味わいがあるし、硬軟取り混ぜた悲喜こもごもの描写がとてもいい雰囲気を醸し出している。

 イーストウッドとほぼ同年の山田洋次監督が「運び屋」の主人公を寅さんに例えていたが、今回は描かれた世界全体が「男はつらいよ」的な感じがした。脚本シェンクによる「グラン・トリノ」と「運び屋」とこの映画を、“イーストウッド晩年三部作”と呼びたい気になった。

 

Ⓒ2021 20th Century Studios. All rights reserved.

「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」(28日公開)★★★

雑誌記事を映像化すると…

 舞台は、フランスの架空の街アンニュイにある名物雑誌の編集部。社の代表でもある編集長が急死し、その遺言によって雑誌の廃刊が決まる。果たして追悼号=最終号の中身とは…。

 ウェス・アンダーソン監督が、雑誌記事の映像化を念頭に、一つのレポートと三つのストーリーから成る、一種のオムニバス映画として製作した。

 落語で言えば、“枕”となる自転車リポーターの街紹介に始まり、美術記者による囚人画家と絵画の物語「(コンクリートの)確固たる名作」、ジャーナリストによる学生運動の日記「宣言書の改定」、博識記者が、警察署長の息子の誘拐事件の経緯を語る「警察署長の食事室」と続く。

 いずれも、シュールでブラックなユーモアに満ち、一筋縄ではいかない展開を見せるが、長く雑誌作りを経験した者としては、表紙、記事、イラスト、レイアウトはもとより、記者の仕事(文章)まで映像化するアイデアの面白さには大いに興味を引かれた。

(映画ライター  田中  雄二)

 

(KyodoWeekly1月31日号から転載)

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