10月の映画

 ★は五つ星が満点。映画製作の現場を長年取材している筆者の独断と偏見に基づき評価した。

 

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「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(10月1日公開)★★★★

ダニエル・クレイグ版ボンドシリーズの完結編

 「007」シリーズ25作目。現役を退きジャマイカで穏やかな生活を送っていたジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)のもとに、誘拐された科学者を救出するという任務がもたらされる。ボンドは、世界に脅威を与える最新兵器を有する組織の黒幕サフィン(ラミ・マレック)と対決することになる。

 前作の「007/スペクター」のラストで、ついにボンドは引退を決意し、恋人となったマドレーヌ(レア・セドゥ)と共に去っていく様子が描かれた。本作では、前作に続いてマドレーヌとの恋の行方を追いながら、ボンドが現役に復帰する様子が描かれる。そして、ボンドにまつわる新たな秘密が明かされ、あっと驚くような結末も用意されている。

 これは、共同プロデュースも兼任したクレイグが、自身のシリーズ完結編として、ボンドがたどった複雑な感情の遍歴に自ら終止符を打ったことを意味する。正直なところ、2時間44分は少し長く感じるが、そこはクレイグの思いが詰まった結果と解釈した。

 

Ⓒbathysphere

「ONODA 一万夜を越えて」(8日公開)★★★★

フランス人監督が描いた“最後の日本兵”の30年間

 太平洋戦争終結後も任務解除の命令を受けられず、フィリピン・ルバング島で孤独な日々を過ごし、1974年に日本に帰還した小野田寛郎元陸軍少尉の物語を、フランスの新鋭監督アルチュール・アラリが映画化。

 本作は、恐らく手記や証言などを手掛かりに、想像を交えながら、30年にわたる“謎の日々”を埋めていったのだろうと思われる。その作業を、フランス人の監督を中心に、多国籍のスタッフが行ったことは驚きだったが、逆に日本人が撮ったら、ここまで踏み込んでは描けなかったのではないかとも感じた。

 実際、小野田がどう生き抜いたのかを描いたこの映画の3時間は決して長さを感じさせない。アラリ監督は「これは一種の寓話(ぐうわ)」だと語っている。もちろん、この映画で描かれた全てが真実ではないだろうが、先頃公開されたジョニー・デップ主演の「MINAMATA︱ミナマター」同様、こうした事実を掘り起こして知らしめるという点では意義があると思う。

 

Ⓒ2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

「かそけきサンカヨウ」(15日公開)★★★★

悪人が一人も登場しないところが心地いい

 窪美澄の同名短編小説を今泉力哉監督が映画化。高校生の陽(志田彩良)は、父の直(井浦新)と2人暮らしをしていた。だが、父が再婚し、義母となった美子(菊池亜希子)とその連れ子で4歳のひなたとの新たな暮らしが始まる。陽は、新生活への戸惑いを、同じ美術部に所属する陸(鈴鹿央士)に打ち明けるが…。

 家庭環境のせいで早く大人にならざるを得なかった陽の葛藤と成長が、陸との淡い恋愛感情を交えながら描かれる。今泉監督は、登場人物の一人一人がきちんと浮き立つような演出をする。つまり群像劇に冴えを見せるのだ。今回も、主人公は陽と陸だが、彼らの家族、同級生たちの姿を、一人一人丁寧に描いている。

 実質的な悪人が一人も登場しないところに甘さを感じる向きもあろうが、人間の嫌な面や醜さを強調して描く映画が多い中、設定に共通点がある沖田修一監督の「子供はわかってあげない」と同様に、こうした映画には好感が持てる。

 

Ⓒ2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「DUNE/デューン 砂の惑星」(15日公開)★★★★

映画館で見ることが必須だと感じさせる

 フランク・ハーバートのSF小説を、ドゥニ・ビルヌーブ監督が新たに映画化したスペクタクルアドベンチャー。2部作の第1弾で、原作の前半部分のみを描いている。

 人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いた西暦1万190年。レト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、通称「デューン」と呼ばれる砂漠の惑星アラキスを治めることになったが、それは皇帝によるわなだった。やがて、レト公爵は殺され、側室のジェシカ(レベッカ・ファーガソン)と息子のポール(ティモシー・シャラメ)も命を狙われることなる。

 最初は、なじみのない名称や固有名詞の羅列に戸惑うが、やがて、ビジュアルの素晴らしさ、独特の質感や色遣い、ハンス・ジマーの音楽、地響きがするような音響効果が相まった世界に圧倒される。

 コロナ禍の影響もあり、小粒で渋い映画が目立つ中、久しぶりに映画館で見ることが必須だと感じさせる映画が登場したと言っても過言ではない。

 

Ⓒ2021「燃えよ剣」製作委員会

「燃えよ剣」(15日公開)★★★

新解釈や新たな場面を加えて描く新選組

 新選組副長・土方歳三の生涯を描いた司馬遼太郎の原作小説に、新解釈や新たな場面を加えながら、原田眞人監督が映画化。

 江戸時代末期。武州多摩の農家に生まれた土方歳三(岡田准一)は、近藤勇(鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)ら、同志と共に京都で新選組を結成。討幕派制圧のため京の町で活躍するが…。

 歴史ドラマはどちらの立場の側から描くかで、全く解釈や人物像が異なる。従って新選組も、討幕派から見た殺りくや粛清の集団として描かれることもあれば、本作のように内部から見た切ない群像劇として描くものもある。歴史ドラマは、そうした多様性が面白い。

 今回、原田監督は、武州多摩郡の悪ガキだった近藤、土方、沖田、そして井上源三郎(たかお鷹)を、男同士の連帯の姿としてハワード・ホークス監督の「リオ・ブラボー」(1959)の4人組に、あるいは悪ガキ仲間の成れの果てとして、マーティン・スコセッシ監督の「グットフェローズ」(90)になぞらえて描いたという。

(映画ライター  田中  雄二)

 

(KyodoWeekly10月25日号から転載)

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