変貌する日本の大学教育

写真はイメージ

 日本の人口は2008年にピークを迎え、現在では2%程度減少しており、特に若年者数が減っている。他方、文部科学省の「学校基本調査」によると、2020年の国内の大学在籍学部生数(262万人)および大学進学率(58・6%)は、いずれも史上最高値であった。ただ、性別、専門別では異なる特徴がみられる。

 男子学生数は過去20年間で約10%減少したが、女子学生数は約50%増加した。その結果、女子学生の学部生数に占める割合は20年前の36%から、現在は46%まで増加しており、男性とほぼ等しい。なぜ女子学生の割合が増加したのだろうか。それは、専門別の学生数の動向を見ると明らかだ。

 前述の調査によると、現在の大学在籍学部別の学生数の割合は、社会科学32%、工学15%、人文科学14%、保健13%、その他8%、教育7%、理学3%となっている。

 このうち、過去20年間、上位3学部(社会科学、工学、人文科学)と理学を勉強する学部生数は約15%減少したが、教育は1・3倍、保健は2・4倍にそれぞれ増加した。教育と保健は比較的女性が多く、前述の女子学生数の増加と相関していると考えられる。

 特に保健の増加が顕著だが、これは高齢化社会に対応するため2000年に公的介護保険制度を導入したことで、介護系の仕事に対する需要が急増したためと考えられる。

 一方、女子学部生数や女性労働力率の急増は、大学卒の「賃金プレミアム」という別の要因も関係していると考えられる。大学卒の「賃金プレミアム」とは、大学卒業者であることにより、高校卒業者よりも多く得ることができた賃金の上乗せ分を指す。経済協力開発機構(OECD)のデータでは、日本の大学卒の「賃金プレミアム」は米国より低く、欧州の多くの国々より高いが、過去30年間で上昇してきている。

 そして、この上昇傾向は男性より女性の方が特に強い。今後も女性を中心に、大学へ進学する魅力は強まると考えられる。

 さて、短大への進学も含めると高校卒業者の半数以上が大学へ進学している現在、どのような理由で大学へ進学することを決めているのだろうか。

 ベネッセコーポレーションのアンケートによると、「将来の仕事に役立つ勉強がしたいから」と回答した学生が最も多く、進学希望動機として仕事に関連する項目が優先されていることが分かる。

 将来社会に出たら役立つことを学びたいという傾向は、伝統的な専門分野よりも「その他」に含まれる専門分野を選択する学部生が、過去20年間で4倍も増加したことにも表れている。「その他」にはデザイン、メディア、福祉、環境、マネジメント、システム、情報、健康、スポーツ、国際などの実用的で学際的な分野が多い。

 こうした仕事向けの専門分野への関心の高まりは日本企業の採用方法にも変化をもたらす可能性がある。多くの企業は大卒者の採用に際して「文系」と「理系」の区別を重視するが、大学教育が変貌する中で「文系」や「理系」の区別よりも、具体的な専門の内容にしっかりと気を配った方がいいのではないだろうか。

(アジア太平洋研究所 研究員 カラヴァシレブ・ヤニ)

 

(KyodoWeekly8月2日号から転載)

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