「風のたより~地域経済」地方にも良質な賃貸住宅市場を

写真はイメージ

 「夢のマイホーム」。使い古された言葉ですが、依然として同意する人は多いでしょう。一生家賃を払い続けても何も残らないが、持ち家ならローンが終われば自分のものとは、不動産業者の常とう句ですが、正論でもあります。

 高齢社会になり、持ち家がない人は、老後に家を借りるのが一苦労で、しかも家計が破綻するリスクが高いという話もよく聞きます。

 そもそも、第2次世界大戦以前の都市部では、多くが借家暮らしでした。その状況を大きく動かしたのは、戦後の政府による持ち家政策です。戦災によって多くの借家が破壊されたこともあり、都市部で住宅不足が深刻化しました。

 公的な賃貸住宅の供給だけでは不足を解消できず、不動産取得や住宅ローンを組むことが有利になるような税制などによって、持ち家、いわゆるマイホームの取得が奨励されたのです。人口の増加とともに地価が上昇し、マイホームが極めて有利な資産形成の手段であった成功体験も、日本人の住宅所有意識を高めました。

 しかし、今後日本の人口減少は明らかです。

 都市部や再開発地区以外では、地価が目立って上がることは期待できず、資産形成の効果は限定的です。にもかかわらず、政府の持ち家政策が時代に合わせて改まる様子はなく、国民の持ち家志向も依然として高いようです。

 持ち家政策の問題点の一つに、不動産の流動性を低下させることが挙げられます。子どもが独立し、夫婦2人になっているのに、必要以上に広い間取りの住宅に暮らし続け、逆に子育て世代が狭い住宅で苦慮しているのは見慣れた光景です。

 また、地方都市の市街地では、人口密度の低下と住民の高齢化が進み、都市が空洞化することも持ち家政策の弊害の一つとみることが可能です。

 家族構成やライフスタイルの変化に合わせて住み替えようにも、少なからぬ国民が、マイホームに縛られ、住宅ローンで身動きがとれない状況にあります。身軽に住み替えができる世帯は、決して多くはありません。

 新型コロナウイルスの感染が拡大し、テレワークや二地域居住に注目が集まっていますが、いざ地方暮らしを始めようと思っても、手ごろな賃貸住宅が少ないという住宅市場の壁に突き当たります。

 高齢者が直面している住宅の借りづらさも、わが国に賃貸住宅が少ないことに一因があるのかもしれません。

 とりわけ地方において、良質な賃貸住宅市場が形成されてこなかったことは、持ち家に重きを置いてきたわが国住宅政策の負の遺産といえます。

 高齢者であろうと移住者であろうと、誰もが安心して暮らしたいところに住居を構えられるのが望ましいことです。

 家族構成やライフスタイルに適した間取りの住宅に住み替えたり、テレワークや二地域居住希望者を受け入れたりするうえで、良質な賃貸住宅市場は必要不可欠です。

 私たちの住宅に対する意識も、住宅そのものに夢を投影するのではなく、住宅は夢をかなえるための道具にすぎないのだと、考えを改めることが必要なのではないでしょうか。

(日本総合研究所 調査部 上席主任研究員 藤波 匠)

 

(KyodoWeekly6月14日号から転載)

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