シニアのキャリアを即戦力に エスプール、問い合わせ急増

 経験豊富なシニアを即戦力として企業に紹介するシニアマッチング事業が注目されている。人材ソリューション事業などを手掛けるエスプール(東京)ではシニア人材の登録者が1万人を超える一方、企業からの問い合わせが急増している。長引くコロナ禍で就労状況が悪化しているが、企業にとって、シニアが持っている経験やスキルを即戦力として「必要な時だけ活用できること」が大きな魅力になっている。

化粧品についてアドバイスする三栖さん=さいたま市の医食同源ドットコム本社(筆者撮影)

 新型コロナウイルス感染症の拡大で企業倒産が相次ぎ、就労状況はますます深刻化している。5月28日、総務省が発表した有効求人倍率は1・09倍、完全失業者は209万人と厳しい雇用情勢が続いている。

 一方、経営難に見舞われている企業は有能な人材の確保に躍起になっている。

 エスプールは、2010年から特化した実務経験やノウハウを持つシニアと、そうした人材を求める企業をマッチングさせる「プロフェッショナル人材バンク」を展開している。同社によると、シニア登録者は1万人を突破した。一方、企業からの問い合わせは前年より2・2倍、成約率も2・5倍に達しているという。

 エスプールの紹介システムの特徴は、企業は有能な人材を「必要な力を必要な時だけ」活用できることだ。

 常勤者の紹介だけはなく、現職や自営のシニアを非常勤の「顧問」や「アドバイザー」などとして紹介している。

 シニアにとって兼職・兼務が可能で定期的に通勤する必要がないのは魅力だ。また、資力の乏しい中小企業は人件費や社会保険料を抑えられるメリットがあり、「ウィンウィン」の関係と言えそうだ。

 

化粧品のプロが助言

 

 5月中旬、さいたま市南区にある「医食同源ドットコム」本社の会議室。顧問の三栖大介さん(59)は、若い営業部社員に化粧品の開発や製造プロセス、マーケティングなどについて説明し、意見交換した。

 三栖さんは大手化粧品メーカーで研究開発から品質管理まで幅広い業務経験のあり、欧米の化粧品事情にも詳しい「化粧品開発のプロ」だ。

 早期退職し、昨年12月、横浜市内に化粧品開発コンサルタント会社を立ち上げ、エスプールの紹介で医食同源ドットコムの顧問(非常勤)に就いた。他の数社ともコンサルタント契約を結んでいる。

 医食同源ドットコムは主として健康食品やマスク、衛生用品などをインターネット販売。事業拡大の一環として化粧品事業への進出を目指している。

 月数回、医食同源ドットコムを訪れる三栖さんのアドバイスについて社員は「社内には化粧品に詳しい人材がいない。原料の選定から製造、商品化、販売方法に至るまでアドバイスしてもらえ、助かっている」と話した。

 

IT化をアドバイス

 

 「社員とのコミュニケーションがうまく行っているし、報酬も悪くない。65歳を過ぎても働きたい」。さいたま市大宮区の稲村滋己さん(64)はエスプールの紹介で新潟市にある藤田金属でシステム改良など社内改革のアドバイザー(非常勤)を務めている。

 約30年間、メガバンク系シンクタンクに勤務。金融システムの開発や銀行統合プロジェクトなどに従事。役職定年後、物流会社を経て独立。約3年前、エスプールから藤田金属を紹介された。

 「ヒアリングから始め、社内メールやウェブを切り替えたり、サーバーを交換したりしてIТ化を少しずつ広げている。何よりも社長や社員が協力的で楽しい」

 稲村さんは、自宅の埼玉県大宮から新潟まで交通アクセスが良いのも利点だという。幹部社員は「稲村さんが時々来るようになって社内の雰囲気が変わった。忌憚(きたん)なく話せ、IТ化が確実に進んでいる」と強調する。

 

シニアも企業も危機感

 

 エスプールによると、コロナ前(19年6~10月)と1年後のコロナ感染拡大時(20年6~10月)を比べると、登録者数は556人から843人(前年比152%)、企業からの問い合わせ件数は158件から348件(220%)にそれぞれ急増。成約数は89人から222人(249%)に増えた。

 結果についてエスプールは「コロナの影響でリモートによる仕事が増え、企業はリモート環境を活用した社外のアドバイザーコーチングや、営業系人材を期待している傾向がある」などと分析している。

 中村遼志プロフェッショナル人材バンク事業部長は「コロナで登録者や企業の問い合わせがかなり増えている。シニアは定年後、どのようにして社会に関わっていくのか、危機感を感じているのではないか。一方、企業も危機感を募らせている。生き残るために即戦力のある人材を欲しがっていることが分かる」と指摘した。

 冒頭の三栖さんは「サラリーマンを辞めるのは、ギャンブルに近いように感じるが、組織の命令ではなく、自分の判断で仕事を選べるのは人生にとって大きなメリットだ。可能性を信じてチャレンジしても損はない」と語っている。

(福祉ジャーナリスト 楢原 多計志) 

 

(KyodoWeekly6月14日号から転載)

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