「言の葉の森」コロナ「か」いろいろ

写真はイメージ

 「コロナ禍」。新型コロナウイルスの流行に伴い、この言葉が初めて毎日新聞の紙面上に登場してから、1年以上がたちました。残念ながら、いまだ目にしない日はないといってもいいくらい、「禍(わざわい)」は続いています。

 校閲記者として、この言葉が頻出するようになって最初に注意したのは「渦」という違う字が入ってしまっていないかということです。

 「禍」と「渦」は字形が似ている上、未知のウイルスに翻弄(ほんろう)される様が渦に巻き込まれるイメージと結びつくからか、「コロナ渦」と書かれることがしばしばあります。

 しかし、三省堂国語辞典第七版には「―か(禍)」の形で「…による災難」という造語を作るとの説明があり、「豪雨禍」「交通禍」の例が挙げられています。「舌禍」「戦禍」など「わざわい」を表す言葉の延長にできたものであることを考えても「コロナ渦」より「コロナ禍」がよいでしょう。

 「新型コロナウイルスによってもたらされた災難」とすることで、社会・経済活動の制限やそれによって生じたさまざまな不幸・不利益を包括的に表現できます。便利さもあってか、この「コロナ禍」は初めて毎日新聞紙面(東京本社版、地域面除く)上で使われた2020年2月から今年3月末までの間に3398回も登場しています。

 ただ、だんだんと「コロナ禍」という言葉の使われ方に、どこか違和感を覚える場面にぶつかることが増えてきました。

 例えば、小学校の運動会が感染対策に配慮し、さまざまな工夫を凝らして行われた、といった内容の記事についた「コロナ禍、変わる運動会」という見出しです。

 この場合、「新型ウイルスによって、さまざまな制限や困難がある状況のもと」というニュアンスを込めて、同じ「コロナか」でも「コロナ下」とする方がしっくりきます。「コロナ下」が必ずしもポジティブな使われ方をするわけではありませんが、ウイルスの流行下にあっても月日は流れ、そこに人々の日常があることを想像させる言葉です。

 「コロナ下の入学式」「コロナ下で進むバリアフリー」など、最近は前向きな話題の中で「コロナ下」を見かけることも増えてきました。最初の頃はただ、なすすべもなく「禍」に振り回されるしかなかった私たちが、困難な状況「下」でもそれぞれの日常を生き、人生を前に進めている―。

 そんなことを考えながら「禍」と「下」のどちらを使うべきか悩む日々が続くものの、もちろん紙面上に登場しなくなるのが一番です。1日も早くその日が来ることを、コロナ下の新聞と向き合いながら願っています。

(毎日新聞社 校閲センター 久野 映)

 

(KyodoWeekly6月7日号から転載)

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