水害に総合的な対策を

写真はイメージ

 今年も日本列島は、梅雨シーズンを迎えた。雨量の多い時期、想定を超える豪雨が、いつ、どこで起きても不思議ではないのが近年の傾向となっている。

 昨年7月の熊本豪雨で、球磨川の氾濫などにより多数の人命が失われ、甚大な被害をもたらしたことは、いまなお記憶に新しい。

 水害対策として、堤防強化や砂防工事などのハード対策だけに頼るには限界がある。国は、ハード・ソフト一体の「流域治水」という総合的対策の強化に転換した。

 そのための法律として、河川法、水防法、都市計画法、建築基準法を含む九つの法改正が今年4月末に今国会で成立した。リスクの高い地域での開発を抑制する水害レッドゾーンの創設など、まちづくりと連携した水害対策の推進が図られることになった。

 こうした国の動きは高く評価できるが、効果をさらに高めるためには、先行する地震対策と同じような総合的対策の枠組みの強化、自助による備えを促す水害保険制度の強化が、なお取り組むべき必要な課題と考える。

 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国は1995年に地震防災対策特別措置法を制定した。同法を受けて、全都道府県は、地震防災対策の実施目標の設定と5年おきの事業計画を策定し、国庫補助の下で、全国において地震防災施設などの整備を推進している。

 加えて、住宅の耐震改修を促進する各種インセンティブ施策も用意されている。こうした国と地方をあげた全国的な防災対策の強力な推進の枠組みは、水害対策では存在しない。

 近年の水害では、バックウオーター(背水)現象への対策強化、防災拠点施設となる市町村庁舎の水害時の機能確保、地域の拠点病院の浸水対策強化といったこれまで十分に着目されてこなかった課題が顕在化した。

 こうした緊急に対処すべき課題をはじめ、全国的な水害対策の強力な推進のためには、国は水害対策特別措置法(仮称)を制定し、全都道府県において優先度も踏まえた実施目標の設定と5年おきの事業計画を策定し、進捗(しんちょく)管理の「PDCA(計画・実行・評価・改善)」を回す枠組みの早期実現が必要と考える。

 次に重要な課題は、水害保険制度の強化である。

 現行の水害保険は、民間の火災保険に付帯される補償であるが、被災後の住宅再建で個人負担を軽減する大きな役割がある。激甚化する水害が今後も頻発すれば、民間損害保険業界に東日本大震災直前と同じ1兆円の異常危険準備金残高があっても、負担力を超えることが生じかねない。

 首都東京の荒川右岸氾濫の場合、筆者が試算してみると、水災補償の保険金額はこの1件だけで約3兆円に達する。地震保険と同じく、水害保険についても、民間の負担力を超えるところは、国が再保険を行う新たな制度を考える時に来ているのではないだろうか。

 また、官民が保険責任を分担する新たな水害保険制度では、保険料に地域の水害リスクの高低を反映させ、リスク回避の土地利用や住宅・建築物の耐水性強化を促すものとすべきである。先行する制度例として、米国の連邦洪水保険制度があり、わが国での制度設計にあたり参考になるだろう。

(アジア太平洋研究所 上席研究員 藤原 幸則)

 

(KyodoWeekly6月7日号から転載)

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