「風のたより~地域経済」都市と農村の縁組

世田谷区によって保全される川場村内のかやぶきの古民家。カヤ場の再生も図られている=4月(筆者撮影)

 東京都世田谷区と群馬県川場村は、40年前にふるさとづくり戦略に根差した「縁組」協定を締結、そのつながりは両地域の暮らしを豊かなものにしている。

 1981年、世田谷区は川場村との間で「縁組協定」(正式名称:区民健康村相互協力に関する協定)を結んだ。

 当時、全国的にも過密過疎問題が指摘され、77万人の人口を有する世田谷区でも、都市化による生活環境や防災上の課題が生じていた。

 他方で、地方の農山村では人口流出が進んだ。全国過疎地域対策促進連盟(当時)では「ふるさと村」構想を提案、都市との関係の再構築が提起されている。

 世田谷区では区民健康村づくり計画を立ち上げ「区民の第二のふるさと」創出を目指した。候補地の選定にあたり、近からず遠からず、田園や里山の風景があり、眺望がよく、健康村に対する思いを共有できるという点から候補地を挙げ、52町村について、ヒアリングを実施し、川場村に絞り込んだ。川場村が選ばれたのは、開発の手が入らない「何もない村」だったからだそうだ。

 反対に、川場村内では当時、施設整備により都会から人が流入することへの抵抗感が強かったという。

 ふるさと村構想についての議論を重ね、最終的に二つの集落が受け入れに同意し、村内に二つの拠点施設「ふじやまビレジ」「なかのビレジ」が整備された。区民は格安で宿泊できる。

 無論、これらの施設は単なる区民の保養所ではない。「第二のふるさと」川場村の里山保全を支える戦略が散りばめられている。景観に配慮した施設、カヤ場や炭窯など、里山の生態系を保全する環境が整えられ、来訪者には、川場村民との多様な活動・体験交流の機会が設けられている。 里山保全活動や、区内小学5年生を対象とした移動教室の実施、リンゴの木オーナー制度など、農山村の田園風景を守り、保全する活動に結びついている。世田谷区内にある東京農業大の参加・協力も大きい。

 経済効果も無視できない。現在、人口約92万人の世田谷区とのつながりは、川場村の農家にとって、リンゴやコメなどの販売先の獲得にも結び付く。せたがやふるさと区民まつりなど区内イベントでの新鮮な農産物などの販売は双方にとって意義のあるものとなっている。

 農業と観光を基幹産業として地域振興策を展開する川場村では、バブル期にもゴルフ場開発などをすべて拒絶した。その後、道の駅川場田園プラザを創設、いまでは巨額の売り上げを上げる全国トップクラスの道の駅として知られる。

 縁組協定が村を開き、街を開いた。風土・文化の保全とともに経済活動を伴う往来が、互いの暮らしを豊かなものにしている。

(東洋大学教授 沼尾 波子)

 

(KyodoWeekly6月7日号から転載)

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