一期一会の文化

ライブハウスの演奏の様子(筆者撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大から1年以上が経過した。収束のめどがたたない状況が続いているものの、日本を含め、世界各地でワクチンの接種が開始されたことで、感染状況に対し改善への期待が見られる。

 しかし、いまだ国内ではワクチン供給が不十分であるため、ワクチン接種が行き渡るまで、経済活動は厳しい制約が続くだろう。中でも対面型のサービス業を中心に悪影響が出ている。

 経済産業省が公表しているサービス産業の動態を示す第3次産業活動指数(2021年1月分)をみても、2度の緊急事態宣言を受け、企業活動は低調が続いている。また、2020年において、新型コロナウイルスの影響で倒産した業種の多くは、飲食業や宿泊業といわれており、ここ数年、インバウンド(訪日外国人客)需要が旺盛だった関西で、この影響は非常に大きい。サービス産業が過去に例のない打撃を受けている。

 ここで筆者は昨年のあるニュースを思い出さずにはいられなかった。名古屋ブルーノートが閉店したというのだ。名古屋ブルーノートといえば、国内外問わず有名なアーティストが出演していた有数のライブハウスであったが、このコロナ禍では、思うような運営ができず、やむなく廃業に至ったと聞く。

 関西でも同様の話をよく聞く。筆者がよく利用していた地元のライブハウスも、昨年9月に惜しまれつつ、営業を終了したばかりであった。四半世紀にわたって、地域密着型の運営を続けていたが、コロナ禍での経営は相当厳しかったのだろう。

 ここで少し、関西とライブハウスの関係を歴史的に振り返ってみたい。諸説あるものの、日本で最も古いライブハウスは、大阪府や京都府のライブハウスであるといわれる。関西にライブハウスの文化が昔から根付いていたことは、非常に面白い発見ではないだろうか。

 厳しい状況下ではあるが、各ライブハウスは感染予防対策をしながら、なんとか運営を続けている。例えば、対策の一つにSNSを通じたオンラインでのライブ配信がある。これまでのように、現地に行かなくとも、自宅などで視聴可能となったのは、非常に魅力の一つである。

 コロナ禍で落ち込んだ収益をクラウドファンディングで賄うプロジェクトを立ち上げる団体も増えている。このような取り組みは関西でもなされている。京阪神にある九つのライブハウスが行ったクラウドファンディングでは、わずか2カ月で396人の支援者から総額約835万円が集まったという。このようにライブハウス文化を残したいとの非常に強い気持ちが感じられる。

 しかしながら、コロナがいつ収束するのか不透明なため、先行きは暗い影を落としている。

 暗いニュースが続く一方、喜ばしい出来事も最近あった。先述した筆者が利用していたライブハウスが、近々新たな装いとなり、同じ場所で再オープンする。以前と同じく地域密着型の経営を目指すという。地域文化が残ることに、筆者もうれしい。

 今後、ワクチン接種によってどこまでこの状況が変わるか不確定だが、コロナ禍が収束した暁には、出演者と聴衆が一体となることができる一期一会の「場」に再び、筆者も還(かえ)っていきたい。

(アジア太平洋研究所 研究員 野村 亮輔) 

 

(KyodoWeekly5月3&10日号から転載)

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ