「口福の源~食料」畑が持つ〝底力〟

ボルドー、シャトー・ムートン・ロスチャイルドにて=2018年4月

 4月は進級、進学など新しいことが始まる時期でもあるが、私たちにとっては、フランス・ボルドーの新「ビンテージ」(ブドウが収穫された年)を試飲するタイミングだ。

 ボトルへ瓶詰めする前、たるで熟成中のワインを試飲しながら買い付けを決める「プリムール」という取引がボルドーにはあり、通常の出張期間は1週間。月曜朝から金曜夜まで、シャトー(ワイナリー)を訪問しながら新ビンテージを試飲、シャトーやネゴシアンとの商談、昼夜の会食でいっぱいの濃い1週間であり、スケジュールを自身で組んでいるものの、大変目まぐるしい。

 もちろん今年は去年に続きこの出張に行けないため、2020年ビンテージのワインは、サンプルを取り寄せて日本で試飲し、生産者とはリモートでミーティングをする予定だ。

 ボルドーは、商業的なイメージが強く、生産量のスケールも大きいため、“人”という存在が見えにくい。天候の苦労や生産者の努力も見えにくい。

 しかし、ボルドーのみならず、何の苦労もないワイン産地などはなく、雨量、日照量、霜やひょう、気候変動がもたらす影響や変化に合わせ、環境に配慮をしながら未来を見据えて、さまざまな対応がされている。

 ワイン造りは自然が相手。毎年それぞれ違うビンテージが生まれることこそが、ワインの魅力であり、ビンテージの個性である。消費者目線でいえば、「はずれ年」より「当たり年」を選びたいのは自然なこと。

 ただ、ボルドーは年々、はずさなくなっていると感じる。

 大学や専門機関での研究などが現場で活(い)かされる仕組みが築かれているほか、充実した醸造施設、栽培にかける資金力、過去の経験に対してスピードを持って対応できること、難しい年でも一定の品質をコミットする、世界トップ産地の強さはそこにある。

 買い付けの際、当たり年とよばれる年は、はっきりとした意志がワインから伝わり、圧倒されるものがある。

 一方で、天候における苦労などがあった年は、ワイン自身による言葉数が少なめで主張も控えめであるからこそ、耳を傾けたくなる。それぞれの生産者が切磋琢磨(せっさたくま)しながら仕上げる背景。当たり年よりも品質の差がシャトーごとに出るのもこういう年でもある。

 そしてそんな時「いいテロワール(ブドウを取り巻く生育環境)があるからね」という言葉が飛び交う。偉大とよばれるシャトーの畑は、どんな年も、難しいといわれる年でも、畑が持つ“底力”がワインに表れるのだ。

 2020ビンテージ。ワインの品質や特徴を追うことはもちろん、どんな思いがボトルにこれから込められるのか。ワインはまだ、たるの中だ。生産者から丁寧に聞き出したい。

(エノテカ バイヤー 石田 敦子) 

 

(KyodoWeekly4月26日号から転載)

全国選抜小学生プログラミング大会
オンラインイベントポータル
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ