「日本一厳しい」ブランド管理

写真はイメージ

 兵庫県加西市で2020年度のふるさと納税寄付額が昨年12月末で前年比2・7倍になったというニュースが目に留まった。

 背景として、新型コロナウイルス感染拡大を受けた「巣ごもり消費」が追い風になったこと、国の助成を利用して返礼品である神戸牛を2倍にするキャンペーンを実施したことなどが奏功したとされている。

 コロナ禍で多くの産地が、国内外の観光客激減による消費量の減少、在庫の増加と販売価格の低下といった課題に直面している。

 こうした中、生産者や流通業者などを支援するキャンペーンは、生産体制の維持だけでなく、地域の学校での食育にもつながることが期待される。

 今や「和牛」は和食の代表的なメニューとなった。神戸牛の他にも日本国内には多くのブランド牛があるが、特に海外での神戸牛の知名度は高い。また、牛肉自体が京阪神の人間にとって大変なじみ深い食材でもある。居酒屋で出てきた肉じゃがに牛肉が入っているのを見て、関東から関西に移ってきた筆者は、西日本は牛肉文化、東日本は豚肉文化であることを実感した(ちなみに肉じゃがは、京都府舞鶴市で海軍がビーフシチューを醤油(しょうゆ)や砂糖で代用しようとしたのが始まりとされる)。

 そもそも日本人が本格的に牛肉を食べるようになったのは、明治時代までさかのぼる。

 幕末、江戸幕府が結んだ日米修好通商条約により、神戸、横浜などの港が開港し、外国人の居住と貿易が認められた。その後、明治政府は開国を進め、日本に住む外国人が増え始めた。

 そこで問題になったのが食料事情である。既に食肉文化があった外国人は日本滞在中でも肉料理を求めたという。

 しかし、当時の日本は魚や野菜が中心で肉を食べる習慣はなかった。そこで、農耕用として牛が飼育されていた関西に白羽の矢が立ち、神戸港から牛肉が出荷され、横浜などの居留地で提供された。中でも、但馬地方の牛肉は大変おいしく、感動した外国人の間で「神戸牛」と呼ばれ、広まったとされる。その後、文明開化で外国の珍しい文化とともに、日本人の間でも広がっていったようだ。

 第2次世界大戦後、食の欧米化が進み、国内の牛肉消費量も伸びた。2012年以降は海外への輸出も積極的に進めており、現在23カ国・地域まで拡大している。それに伴い、神戸牛を提供する海外の指定登録店も250店を超えている。

 神戸牛が高級牛肉として高い知名度を誇るのは、厳格なブランド管理のたまものでもある。神戸牛が有名になるにつれて、出所不明の粗悪品が市場に出回った。

 そこで、兵庫県内の生産農家や販売業者、消費者団体が「神戸肉流通推進協議会」を設立し、神戸牛の定義を決めた。合わせて、肉質の評価基準を整備し、証明書を交付、関係者は登録制で取引は全て記録される。こうした「日本一厳しい」とされるブランド管理のおかげで、われわれは安心しておいしい神戸牛に舌鼓を打つことができるのである。

 8月29日(焼き肉の日)はまだ遠いが、調べるほどに食べたくなる。今日もついつい通販サイトを巡回してしまっている。

(アジア太平洋研究所調査役 木下 祐輔)

 

(KyodoWeekly4月12日号から転載)

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