新・戦略思考の広報マネジメント 話題づくりから価値づくりへ

 企業広報戦略研究所(電通PR内)では、2015年に発刊し、反響を呼んだ書籍「戦略思考の広報マネジメント」が発刊から5年を経て、2020年12月に続編となる新刊「新・戦略思考の広報マネジメント」(日経BP社)を発行した。

 

1980円

 発刊の背景として新型コロナウイルス感染拡大はもちろん、それ以前から経営環境が急速に変化し構造的な変革がもたらされたことにある。変革要因は「ESG(環境・社会・企業統治)」と「デジタルトランスフォーメーション(DX)」にあり、本書ではこの変革に着目。企業広報への影響をデータと企業事例を合わせて解き明かしている。自社の社会的な存在意義をステークホルダー(利害関係者)目線で整理し経営に反映する「価値づくり」の広報をコンセプトに構成されている。

 企業が行う広報活動本質が情報発信そのものにあるのではなく、発信するまでのプロセスと発信したその先に存在するステークホルダーに対して、ポジティブな影響を与え企業価値へ寄与する点についてあらためて検証しており、ニューノーマルにおける企業広報の在り方を示唆している。

 企業価値の観点から論じるにあたっては、会計学、コーポレートガバナンスの第一人者である一橋大学経営管理研究科CFO教育研究センター長・伊藤邦雄氏のインタビューを収録。各事業部門の連動性において広報部門がどうハブとなり統合的な機能を果たすべきか「統合思考」について論じている。ぜひ、広報担当役員の方々は注目して読んでいただきたい内容である。

 2020年はコロナウイルスの影響により、ステイホームを余儀なくされ、企業という組織と従業員の関係性についてあらためて問われた年であった。企業の事業活動を通じた社会への貢献性が選別され、上場企業にとっては市場評価と直結する時代に移行しつつあり、その点に留意しながら「企業の広報活動に関する調査」データと合わせて読んでいただきたい。

 当研究所が実施した「ESG /SDGsに関する意識調査」(対象:一般生活者)では、2018年からSDGs(持続可能な開発目標)に関する認知や行動変容、態度変容に関する項目を検証している。

 「SDGsの取り組みを認知し何かしら行動あり」が前年に引き続き2020年も約7割に達しており、今後はESGに関連した企業情報が、企業ブランドに今まで以上に影響を与えていくだろう。

 本書のコンセプトである、企業姿勢や持続可能な社会にどのように貢献するかといった観点など“社会性”からの「価値づくり」については、「ソーシャルバリュー」「インターナルブランディング」「顧客エンゲージメント(やる気)」の三つの視点が重要と捉え、それぞれ花王、住友商事、メルセデス・ベンツ日本の事例を紹介。そこから「価値づくり」とは何かについて「広報戦略」のあるべき姿が見えてくる。

 この「価値づくり」をきちんと解釈するには三つの価値(上図)を正確に把握する必要がある。

 一つは顧客との直接的な接点となる「製品価値」である。自社の製品・サービスを通し顧客や生活者に対して利便性や品質などを訴求し、提供価値を実感してもらうことで、「また使ってみよう」とリピーターや共感者の創出が経済性につながる。二つ目の核になる部分として「市場価値」がある。顧客とのエンゲージメントの深さが経済性をもたらし、マーケットへのインパクトをもたらすことになる。

 そして、最も大切なのが三つ目の「社会価値」である。重視するステークホルダーに真摯(しんし)に耳を傾け、期待にいち早く答えていく傾聴姿勢そのものである。ESG に対する情報開示の議論が活発化するのもそういった経営環境の変化の流れだ。2021年ではより注目される「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」も企業の事業活動と「社会価値」との結びつきが強く問われることになる。

 企業にとっては経済性を追求する「商品・サービス」であっても、その先にどう持続可能な社会に影響するのか「社会価値」を視野に入れた企業姿勢の在り方、価値観を合わせて伝えることが求められている。つまり、「社会価値」を見据えた事業活動のストーリーづくりと企業活動との整合性がとれることで企業価値の向上に寄与する環境に変わりつつある。

 これら三つの価値を意識した上での企業広報の在り方が今後ますます重要になるため、経営者をはじめ広報担当役員と現場広報担当者との連携がより「価値づくり」の成果を二分する岐路になるであろう。

【筆者略歴】

電通パブリックリレーションズ

中 憲仁 (あたり・のりひと)

コーポレートコミュニケーション戦略局 企業広報戦略研究所 上席研究員広報コンサルタント。広報効果測定、KPI開発に関する実績多数。官公庁、インフラ企業、メーカーなどを担当。各種調査を起点とした広報戦略立案から危機管理広報まで幅広く従事 

 

(KyodoWeekly3月15日号から転載)

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