「落語の森」「お寺」にまつわる噺

写真はイメージ

 甲州・身延山(みのぶさん)久遠寺(くおんじ)への参詣途中の新助が元吉原の月の輪(月の兎(と))花魁(おいらん)に鉄砲で撃たれ、身は急流に…というのが名作「鰍沢(かじかざわ)」。かの三遊亭圓朝師の作った三題噺(ばなし)とされる。三題は「小室山の護符」「玉子酒」「熊の膏薬」あるいは「鉄砲」「玉子酒」「毒消しの護符」とも。これには諸説あるようだ。

 先代(八代目)林家正蔵師は、芝居噺で演(や)り、これを最後の弟子で山梨出身の正雀師が受け継いでいる。「甲府い」も身延山がらみの噺。3年の願掛(がんか)け後、江戸に出てきた伝吉が親切な豆腐屋で奉公させてもらい、一人娘と一緒になるハッピーエンドのこの噺、入船亭扇辰師・隅田川馬石師など演り手は多い。

 伝吉が財布をすられるのが浅草寺、「やかん」「小猿七之助」「粗忽(そこつ)長屋」「付き馬」「擬宝珠(ぎぼし)」といろんな噺に登場する。「小猿七之助」は、講釈好きな立川談志師がこの噺をイラストレーター山藤章二氏宅にあった、名人五代目神田伯龍先生のレコードで聴き、「ショック・感動・戦慄(せんりつ)を受け」演っていた。「七つァん、降ってきやァしないかェ」「そうねェ、さっきパラリと見せた雨も、どうやら上がって二ァつ三つ、星ァ見えてますが、所詮夜上(よあ)がり、長持ちァねェね。またァ、降(ばれ)てきますよ」「どうぞして帰るまで、保(も)たせたいねェ」「ま、この塩梅(あんべェ)なら、姐さん、どうやら大丈夫でござんしょう」、師のキレの良い江戸弁と七五調のリズムが心地良く甦(よみがえ)る。ヨッ、家元っ!

 信州・善光寺が舞台の「お血脈(けちみゃく)」は、クスグリを自由に入れられる地噺。それだけに演者のセンスで面白くもつまらなくもなる。やはり立川志の輔師が秀逸、長くも短くもできるので多くの人が演る。先代譲りの桂文治師のも結構。

 奈良・東大寺大仏様の目が落ち…というのが「大仏の眼」。短い噺なので先日、桂夏丸師、さまざまな世相風刺を入れながら演っていた。先代正蔵師は、これをマクラに使って「大仏餅」に入った。先代(八代目)桂文楽師の最後の高座がこの「大仏餅」、1971(昭和46)年8月31日国立劇場で神谷幸右衛門という登場人物の名が出ずに絶句! 「もう一度勉強し直してまいります」という有名なフレーズを最後に二度と高座に上がらなかった。

 半世紀前、新宿末廣亭の楽屋で、先々代柳橋・先代今輔・圓生・先代正蔵・先代小さん・先代馬生の各師、色物さんでは、牧野周一先生や三球照代さんなどに筆者は色紙を書いてもらったが、文楽師だけには恐れ多くて頼めなかった。

 徳川家の菩提寺・増上寺というと「徂徠豆腐(そらいどうふ)」。そして「浜野矩随(のりゆき)」、これは先代(五代目)三遊亭圓楽師のものが印象的、柄に合っていたのか。当代円楽師が演る。      

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly2月22日号から転載)

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