「風のたより~地域経済」風評払拭のけん引役に「福、笑い」

「福、笑い」のパッケージ

 農作業の様子を描いた藍色の手書きイラストのパッケージが印象的だ。福島県が14年かけて開発した高級ブランド米「福、笑い」が昨秋、県内と首都圏で先行発売された。食味アンケートの結果も上々で、今春から本格的な作付けが始まる。秋にはより多くの食卓に上りそうだ。

 福島県農業総合センターで開発が始まったのは東日本大震災前の2006年。当時は作付面積当たりの収穫量が多く、生産コストが低い多収品種の開発が目的だったが、「一つぐらい食味重視の品種を作ってみよう」という意見から生まれたのが「福、笑い」だ。1袋(2キロ入り)1600円程度で売り出されている。

 「コシヒカリ」系統で食味の良い「新潟88号」を母に、「ひとめぼれ」系統で風に吹かれても倒れにくい「郡系627」を父に交配。実った19粒の種子を基に、世代を重ねながら良質な個体を選び、耐冷性や耐病性などの試験を経て19年、国内トップクラスの高級米を目指す県の推奨品種に採用された。

 福島県は全国有数のコメ生産量を誇るが、他県産の同等ブランドのコメに比べて買い取り価格が安く抑えられる傾向がある。10年前の東京電力福島第1原発事故後、残留放射性物質への懸念から福島県産が敬遠され、12年から実施している全量全袋検査で15年産米以降、国の基準値(1キロ当たり100ベクレル)超は検出されなくなっても風評は消えず、他県産に流れた販売先は戻らなかった。

 その結果、直接消費者に産地が表示されないコンビニ弁当などの「中食」や、飲食店など「外食」など業務用向け販売が全国トップクラスの約65%を占め、飲食店にとっては「福島産は価格の割に高品質」という皮肉な評価となっている。

 「福、笑い」のブランド化に当たって県は①ふるい目1・9ミリ以上の粒の大きさ②食味を悪化させる原因の玄米タンパク質の含有率6・4%以下―などの基準を設定。最大の特徴は、生産者を農産物の生産管理の徹底ぶりを示す「GAP認証」を受けた農家に限定していることだ。

 20年は13戸の農家が計6・6ヘクタールの田で計約37トンを生産。郡山市で60アールに作付けした遠藤昭夫さん(67)は、コンピューター制御の農機具を使い、タブレットに施肥料などのデータを毎日入力しながら作業を続けた。「これまで農業はどんぶり勘定だったが、GAP認証を受けているので、求められればいつでもデータを出して生産過程を説明できる。これが安全安心の証明になる」と新たな取り組みに自信を示す。

 21年は作付面積を3・7倍の約25ヘクタールに増やし、約130トンの生産を目指す。県も「『福、笑い』がけん引役となって、福島県産のコメ全体の底上げを図りたい」と期待を寄せている。

(共同通信福島支局長 山田 昌邦) 

 

(KyodoWeekly2月22日号から転載)

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