「落語の森」「牛」にまつわる噺

 あけましておめでとうございます、今年もよろしくお願い致します!

 さて「穴子でからぬけ」という噺(はなし)をご存じでしょうか、「体が大きくてね、足が4本、角が生えててね、ヨダレを流して『モオー』って鳴くのなーんだ?」と与太さんがやさしい問題で相手にもうけさせてやるが、最後には…という噺。代表的な前座噺で「与太郎噺」のマクラによく使われる。昔、噺家さんが芸のことでケンカになった時、「何ィぬかしやがる! こっちは『穴子でからぬけ』から演(や)ってんだ!」と正式に稽古をしてきたことの証明にこの噺が使われた、と先代(八代目)林家正蔵師(彦六)が言っていた。師は、持ち時間の短い正月の席や前の出演者が長めに演ってしまった時などにこの噺を演った。

 「牛ほめ」も寄席でよく聴く。先代(四代目)春風亭柳好師のゆったりした口調、逆に先代(十代目)桂文治師のせせこましい口調が懐かしい。先代(八代目)桂文楽師がこの噺を三代目三遊亭圓馬師に教わった時、「えェ」と言ってしまう癖を直すため、師匠からそれを言う度にオハジキを放られたとうれしそうな表情で語っていたのを思い出す。

 「杭盗人(くいぬすっと)」は、泥棒の小噺。「アラっ、大きいから牛?」に泥棒さん「モォ」、池に飛びこんだら「杭か泥棒か?」と言われ「クイっ、クイっ」。橘家圓蔵師が復活させた「七面堂」という噺のマクラでよく演っていた。あの「ヨイショっと、月の家円鏡です! エバラ焼肉のタレ!」で売れに売れたその人が後の圓蔵師。「七面堂」は桂文雀師が演っている。

 小男が「牛は大きいが、鼠(ねずみ)は捕えられない」と同情されるのが「鍬潟(くわがた)」、別題を「小粒」。三遊亭圓生師が演っていた。今は柳家小満ん師や桂藤兵衛師が演る。 

 「辻八卦(つじはっけ)」は、男の「忠臣蔵五段目の定九郎は、何に生まれ変わった?」に「牛に生まれ変わった」と答える易者の噺。芝居好きだった先代(初代)金原亭馬の助師が演り、やはり芝居好きな桂歌丸師が演った。聴く側も芝居好きでないと楽しめない噺。

 「弥次郎」は、ほら吹き男のくすぐりたくさんな噺。「とにかく北海道ってェとこは寒くってね、小便が凍る、火事が凍る!」「背中にたいまつをつけた牛に水をかけても、『焼け牛(焼石)に水』」とうそのオンパレード。どこでも切れる便利な噺なので演者は多い。

 上方の「鉄砲勇助」が元で、桂米朝・枝雀師弟と笑福亭仁鶴師が秀逸だった。これを春風亭昇太師の師匠である柳昇師は自分で「南極探検」に作り変えた。「南極は夜がないから昼ばかり! いつ昼飯食っていいんだか!」「空ァ見りゃペンギンが飛び交い、いえホントっ、あっちのは野生ですから」。これを「あまりの馬鹿馬鹿(ばかばか)しさに呆(あき)れ返って笑った」と立川談志師は、柳昇師に承諾を得て演った。「立川談志遺言大全集」(講談社)にも収められている。

紫紺亭 圓夢(しこんてい・えんむ)

 

(KyodoWeekly1月18日号から転載)

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