「言の葉の森」○○警察

 わたしは今年のはじめにこの欄で、新語・流行語について取り上げました。「今夏には東京五輪・パラリンピックという大きなイベントがあります」とし、2020年の新語は、後々振り返った時に楽しめるはずだと書いたのです。

 その時には想像もしていませんでした。11月上旬発表の「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされた言葉の半数が新型コロナウイルス関連になろうとは。20年は残念ながら、閉塞(へいそく)感の漂う年となってしまいました。

 コロナにまつわるノミネート語の中で、気になったのが「自粛警察」です。似た表現を、2年ほど前にインターネット上で目にしたことを思い出しました。「着物警察」。着物を着ている人に対し、公共の場で着方や素材について一方的に意見を言ったり、断りなく触って直したりする人を指すようです。明確な定義はないものの、批判的にとらえる見方が多いようでした。

 「〇〇警察」は、いつごろから使われるようになったのでしょうか。三省堂が主催する「今年の新語」を手がかりにたどると、15年には既に、同企画の新語候補として挙げている人がいました。

 また17年には、同企画の選考委員で、三省堂国語辞典編集委員の飯間浩明さんが自身のツイッターでこう述べています。「『〇〇警察』(例、日本語警察)などを複数の人たちが挙げていました(略)まだ使用者・場面の範囲が狭い感じがします」

 〇〇の部分には、さまざまな言葉が当てはまるようです。ただ、「自粛警察」という言葉が生まれる以前は、着物や日本語といった特定の分野で登場した「警察」について、その指摘が正しいか正しくないかを議論する場合などに限られていたと考えられます。

 それが今年、多くの人が意識するようになった「自粛」という言葉と結びついたことで、この表現が広まったのではないでしょうか。さらに言えば、それほど多くの人が「自粛警察」に遭遇したのかもしれません。

 三省堂は「今年の新語2020」の投稿例として「―警察」を挙げ、「ある物事に対して信念を持ち、自主的な取り締まりを行う人々のこと。その信念に反する人を批判する行動をとる」という説明を添えました。

 言葉に関して言えば、わたしも校閲作業で思い当たるところがあります。「こう直した方がいい」というものについて、「こう直すべきだ」と踏み込んで強く指摘してしまったら、「日本語警察」になりかねません。自戒の念を込めて今年の新語を振り返るとともに、21年が明るい年になり、楽しい新語であふれることを願っています。

(毎日新聞 校閲センター 谷井 美月)

 

(KyodoWeekly12月7日号から転載)

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