「風のたより~地域経済」オガールの紫波町、新たな挑戦

デマンド型乗り合いバス「しわまる号」

 岩手県の中部に位置する紫波町(しわちょう)といえば、「稼ぐインフラ」といわれる、オガールプロジェクトで有名だ。役場と民間が連携して行った事業で、全国からの視察が絶えない。

 地元で建設会社を営んでいた岡崎正信は、紫波町からの要請を受け「町の代理人」として、資金調達、テナント誘致、建設、運営まで仕切った。このプロジェクトの最大の特徴は、民間事業が補助金に頼っていない点である。

 その中核施設が、オガールプラザだ。紫波町図書館などの公共施設と、産直の紫波マルシェ、居酒屋、カフェ、眼科、歯科などの民間テナントが同居する。

 私は久しぶりにこの地を訪れ、紫波町役場でオガールを担当していた鎌田千市に会った。現在は企画課長だが、新たな挑戦を始めた。デマンド型乗り合いバス「しわまる号」である。配車システムに人工知能(AI)を導入したバスだ。

 「オガールだけが良くなってもだめなのです。このバスをつかって、高齢者などが中央部と行き来する。そうした町の中の流れをつくるのが重要なのです。遊休不動産の活用や課題はまだまだある。役場の仕事はとてもやりがいがある」

 このバスは、路線や時刻表を設定してない。乗降場所を自由に予約する仕組みだ。料金は大人1人だと500円だが、乗り合いだと300円。鎌田はこの価格差が大事だと言う。「乗り合いだと300円になるので、友達を誘って、バスを使う人も多いのです。コミュニケーションを取って、出かけてほしい」。私は鎌田と話して、公務員がやる気を出せば、町は変わると実感した。

 オガールプロジェクトも、当初から鎌田が担当していた。2008年1月に「公民連携室」が発足し、上司と嘱託職員の3人で担当した。冒頭で紹介したオガールの仕掛け人、岡崎は、鎌田と同じ中学出身で、鎌田の方が2歳年上。2人は公民連携をどのように、町有地の開発に役立てるのか、東洋大大学院で机を並べて、勉強した。鎌田は当時をこう振り返る。「公民連携といっても、塩漬けの土地10・7ヘクタールにどのように適用するか。皆目見当が付きませんでした」

 2人は、金曜日の夜にはホテルの近くの居酒屋で紫波町の将来について議論した。鎌田は公民連携が本当にできるか不安になって、「大学院を辞めたい」と愚痴をこぼすと、岡崎から「弱音は聞きたくない」と叱責(しっせき)されたという。「この年になると、先輩後輩が逆転するんですよ」と鎌田は笑う。

 人口減少社会において、公務員は前例踏襲では機能しない。民間の人と一緒に、汗を流す。そして、次々に新たな挑戦を続ける。そんな公務員の存在こそが、地域再生に不可欠だと、私は思う。(敬称略)

(ジャーナリスト 出町 譲) 

 

(KyodoWeekly11月30日号から転載)

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