「陸海空の現場~農林水産」「胆力」示した農水官僚

 日本学術会議が推薦した新会員候補105人のうち6人の任命を、菅義偉首相が拒否した。さらに菅政権は、日本学術会議を行政改革の対象として検証する方針だ。「学問の自由の侵害には当たらない」という政府の説明を信じたいところだが、予算や事務局定員の妥当性についても「聖域なく見ていく」(河野太郎行改担当相)という姿勢は、日本学術会議だけではなく、国立大学や国の研究機関、文部科学省の助成を受けている研究者にとっても、重圧になる。

 こんな雰囲気の中、藤原辰史・京大准教授は10月20日にオンラインで開催した「コロナ新時代の農と食」と題する講演で、菅首相を名指しで批判した。

 「新型コロナウイルスの感染拡大によって、 新自由主義が抱えている問題が露呈した」との認識を示した上で、米カリフォルニア大学バークレー校のウェンディ・ブラウン教授の著作「いかにして民主主義は失われていくのか:新自由主義の見えざる攻撃 」(みすず書房)を紹介しながら、菅首相が主張している「中小企業の再編」などの問題点を指摘した。

 このセミナーは農林水産省の農林水産政策研究所の主催だ。「官僚」でもある主催関係者の「胆力」は賞賛に値する。

 信念をまっすぐに表明する学者は健在だし、発言の機会を与える国の機関も、確かに存在する。

 もう一つ実例を挙げよう。少し前だが、福島や茨城など8県産の水産物輸入を禁止する韓国の措置について、日本政府は世界貿易機関(WTO)に提訴、2019年4月11日に紛争処理の「二審」に当たる上級委員会が韓国の主張を認め、日本は逆転敗訴した。

 当時官房長官だった菅氏は「わが国が敗訴したとの指摘はあたらない」と述べたが、これに対し、独立行政法人・経済産業研究所(RIETI)の非常勤研究員の川瀬剛志・上智大教授が「遺憾に思う」と批判した。

 国際経済法の専門家として、理を尽くして説明した上で「苦境にある被災地を救うべく措置の撤廃に追い込めなかったことは、この紛争を提起した目的を達せられないのであり、紛れもない『敗訴』だ。この点は『霞ヶ関のシンクタンク』RIETIの末席を汚す者の使命として、敢(あ)えて苦言を呈しておきたい」と結んだ。この論文は今でもRIETIのホームページに掲載されている。

 こんな当たり前のことに、安堵(あんど)しなくてはならないほど、今の空気は病んでいる。農林水産政策研究所やRIETIは、自由闊達(かったつ)な議論の場を守り抜いてほしい。

 菅首相や政権幹部には、こうした学者や研究機関が発する苦言を受け止めるだけの度量の深さを期待したい。それが「学問の自由を侵害しない」ことに対する証しとなるだろう。

(共同通信アグリラボ所長 石井 勇人)

 

(KyodoWeekly11月2日号から転載)

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