「音楽の森」念願の初共演が実現

 映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズが自作を指揮したライブ・アルバムがリリースされた。それ自体は珍しくないものの、演奏が伝統と格式を誇るウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、会場が音楽の都の殿堂ムジークフェラインとなれば話は別だ。

 ウィリアムズは指揮者としてのキャリアも豊富だが、あの保守的な(と思われている)ウィーン・フィルが本拠地に彼を招くとは…。

 これは今年1月に実現した念願の初共演だという。巨匠が88歳になる直前である点を含めて、“歴史的”“奇跡”とうたわれているのも無理はない。

 本作「ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン」には、「未知との遭遇」「E.T.」「ジュラシック・パーク」「レイダース」「スター・ウォーズ」などの音楽が13曲収録されている。

 演奏自体は予想以上に素晴らしい。偉大なる音楽家のタクトのもとで、以前に比べて色彩感を増した現代の名オーケストラたるウィーン・フィルが、それでもなお揺るがぬ同楽団固有の豊麗で奥行きのあるサウンドを生かしながら、濃密かつ光輝な音楽を創造したといえるだろうか。何より音楽が生気を放っているし、楽員の気迫に満ちた全力投球ぶりにも驚かされる。

 1曲目「フック」の「ネヴァーランドへの飛行」の出だし、特にウィーン・フィルならではのホルンの響きを聴くとすぐに引き込まれ、2曲目の「未知との遭遇」抜粋では、一流楽団のみ表出し得る精緻・精妙なサウンドに魅せられる。

 ここで“バイオリンの女王”アンネ=ゾフィー・ムターが加わり、「イーストウィックの魔女たち」の「悪魔のダンス」で鮮烈極まりないソロを奏でる。彼女の参加も実に豪華だ。 

 おつぎの「E.T.」の「地上の冒険」は、サウンドの美しさと広がりが耳を奪う。以下、同様に続くので、あとは「ジョーズ」の「鮫(さめ)狩り―檻(おり)の用意!」のフーガの明確な表現、「スター・ウォーズ」の「メインタイトル」と「帝国のマーチ」の華麗な迫力を挙げておこう。中でも「帝国のマーチ」は、楽員からの要望で加えられたというだけあって、“物すごい”としか言いようがない。

 思えば「スター・ウォーズ」の最初のサントラ盤は、ロンドン交響楽団の演奏だった。すなわちこれらは、「ウエストサイド・ストーリー」などと同様に、クラシカルなレパートリーとして重要な存在になっていくのかもしれない。本作はいやが応にもそう思わせる快演だ。

 なお、公演全体の映像(本CDよりも6曲多い)を収めたブルーレイ・ディスク付きの「デラックス盤」も発売されている。価格は倍以上だが、より深く楽しみたい方にはそちらをお薦めしたい。

(音楽評論家 柴田 克彦)

 

(KyodoWeekly10月26日号から転載)

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