「本の森」失礼な日本語

岩佐 義樹

●222ページ

●ポプラ新書(税別860円)

 

「させていただきます」

 

 新聞社の校閲者による本の出版が数年前から相次いでいる。ここ5年間に出た「元」も含めた校閲者による本は15冊を下らない。そのうち私の持っているものだけ挙げると―。

 「なぜなに日本語」「『赤旗』は、言葉をどう練り上げているか」「毎日新聞・校閲グループの ミスがなくなるすごい文章術」「マジ文章書けないんだけど 朝日新聞ベテラン校閲記者が教える一生モノの文章術」「校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術」「春は曙光、夏は短夜 季節のうつろう言葉たち」「校閲記者の日本語真剣勝負」「『赤旗』校閲部は、真実をどう伝えるか」「文法のおさらいでお悩み解消! スッキリ文章術」「マスコミ用語担当者がつくった 使える! 用字用語辞典」

 各社の新聞連載やSNS(会員制交流サイト)での発信が出版社の目に留まったケースが多いと思われる。校閲者としては当然、よくある誤字・誤用などの間違い例や、用法が変わりつつある日本語を紹介するものが主流だ。ただ、列挙した中に「文章術」を冠する本が3冊あるように、最近は文章のノウハウに踏み込んだ本も目立つ。

 私が最初に単著で出した「ミスがなくなるすごい文章術」(ポプラ社)もその一つ。このタイトルは出版社が提示したもので、一介の校閲者としては「なんて大それた題」と思い、羊頭狗肉(ようとうくにく)とのそしりを恐れていた。存外うけいれられ、昨年ポプラ新書として改めて出したいという話になった。

 部分的手直しで済ませることもできたが、タイトルを「失礼な日本語」にするとのことで、全面的に改稿することにした。これも大それた題名だが、「失礼」のキーワードのもと、「敬語」や、類書であまり見られない「差別表現」のテーマが寄り集まってくるのを感じた。

 学者ではないので専門的なことは書けない。その代わり、実際の用例をふんだんに引用し、どうして不適切とされるのか、できるだけ自分の頭で考え自分の言葉で語るようにした。例えば「ご応募いただいた皆様」のような使い方は良いのか悪いのか、悪いとしたらなぜ悪いのか、「させていただきます」という言い方がなぜ広がったのか―などの考察を記した。そこから見えてきたのは、読む人、聞く人の立場になっていない、すなわち礼を失する発信のあり方だ。

 SNSで誰もが手軽に不特定多数の読者へ発信できる時代。それは、失礼な間違いや言葉遣いをして拡散され炎上したり、人知れず読者を傷付けてしまったりする危険性と隣り合わせだ。SNSのSはソーシャルのS。ソーシャルディスタンスと同じく、相手への配慮が必要ということを自戒したい。本書が「失礼な日本語」を少しでも減らす一助となれば幸いだ。

(毎日新聞校閲センター 岩佐 義樹)

 

(KyodoWeekly10月26日号から転載)

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